「才能をそのまま活かす」
この言葉にお話の全てが込められているように感じた夢達人ライヴでした。
今回の夢達人ライヴではチョコレートの製造販売を行う「CHOCOLABO」を運営する一般社団法人AOH代表理事の伊藤紀幸さんからご講話を頂きました。CHOCOLABO」というお店の名前には「ショコラとラボラトリー(工房)」「健常者と障がい者のコラボレーション」「プロフェッショナルと障がい者のコラボレーション」という想いが込められています。そして、障がい者・高齢者・健常者が共生するコミュニティ作りを目指しています。
 伊藤さんの転機は銀行で活躍されていた頃にさかのぼります。その頃に待望のお子さんが誕生したのですがお医者さんに告げられたことは、「これからどうなるか何も分からない」という言葉だったそうです。医学的にも詳しくわからない難しい状態でした。伊藤さんにはどうしても滅入る気持ちがありました。それでも、「落ち込んでいても何も変わらない、何がこれからあっても楽しかったねと言うことのできる時間を過ごそう」と前を向いたそうです。その後、お子さんは障がいとともに成長を続けていきます。
 お子さんが小学校に入った時のこと、再び衝撃的なことを伊藤さんは告げられます。学校の先生から、「当校の卒業生は障がい者は就職しても月収3000円程度です。しかもほとんど就職できません。」ということでした。自分の大切な子どもを想い、この子の将来はどうなるのか…そう案じる伊藤さんに障がい者雇用における問題意識が強くほとばしることになります。現在でも日本社会では障がい者のうち就職ができるのは5~6%程度とのことです。
抱いた問題意識とともにアナリストとしての高い専門性を携え、どうしたらよりよい社会を構築できるのか…そう思い行動し知恵を絞りご縁を大切にしてできあがったのが今の「CHOCOLABO」という工房です。
 伊藤さんは「CHOCOLABO」の経営を通じて人との接し方について話をしてくれました。例えばうまくいかないときに「なぜできないのか」と人は感じます。その際に「あの人が悪い、環境が悪い」と他責の姿勢でいるのではなく、「どうしたら出来るだろうか? 自分にまだできることがあるのではないか」と自責の姿勢でいることで事態は切り拓かれていくということです。
また、「コーチング」の考え方の解説には多く時間を割いてくれました。基礎を教える「ティーチング」の過程はもちろん必要ですが、その先にはコーチングの姿勢が重要となります。米・ニューヨークヤンキースではコーチたちに「絶対に選手をけなさない」という決め事あるそうです。このような考えはプロスポーツのいくつもの分野で採用されており、共通することは「選手が心の中に答えを持っている。それを活かすことがパフォーマンスを向上させる」という点です。実際に伊藤さんも困りに困った局面で「CHOCOLABO」のメンバーの方たちに尋ねると次から次へと答えが提出されてみるみる商品の質が良くなっていったそうです。
あるべきと決めた基準から発想するのではなく、持っている才能をそのまま活かす。化学反応を繰り返すことで新しい価値が生まれる。コラボレーションが重なり続けることで新しい社会が生まれる―「これからどのような挑戦をしていきますか」という生徒の質問に伊藤さんはこのように夢達人ライヴを締めくくられました。
講演中は生徒の理解に合わせて話題も言葉遣いも伊藤さんは選んでくださいましたが、その背景にある膨大な知識に裏付けされたお話の数々に生徒は聞き入っていました。静かにゆったりとお話しされた伊藤さんの夢達人ライヴは多くの示唆に富んだ時間であり大変貴重なものとなりました。
生徒がお聞きしたことを熱心に手帳に書き込む姿がその時間の濃密さを表しています。

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