第70回卒業式(高校) (2018年03月17日)

十文字高等学校 第70回卒業式が執り行われました。

4月からは十文字を巣立ってそれぞれの道へ。

さいごまで名残惜しそうに校内に残る生徒

(じゃなく今日からは卒業生)たちがいました。

卒業生の皆さん、

ご卒業おめでとうございます。

十文字での生活をステップに

つぎの目標に向かってがんばってください。

 

昼食をはさみ午後は講堂に卒業生、保護者、担当の先生達が集い

卒業を祝う会を開きました。

バンド演奏や有志の卒業生たちのダンスなど見どころいっぱいでした。

おや、椿がきれい。あっ、桜の花が1つ咲きましたよ。

フォトギャラリー → jumonji-photo.com/

 

 

校長式辞 

皆さん、ご卒業おめでとうございます。
本日、ご多用中にもかかわらず、多数のご来賓、保護者の皆様方のご臨席を賜り、誠にありがとうございます。
ただ今、十文字高等学校での3年間の学園生活を全うされた337名の卒業生の皆さまに卒業証書をお渡ししました。保護者の皆様にも感慨ひとしおのことと存じます。
卒業生の皆様は、2015年4月に、高校に入学されました。2015年というのは、国際的には国連を中心2030年に向けて17の持続的開発目標(SDGs)が制定された年です。誰一人残さず、その目標を達成しようということで、日本政府も取り組んでいます。その目標5は、女性のエンパワーメントです。
在校中、勉強面では、皆さんは3年間努力し、先生方や保護者の皆様のご支援の元に結果を出し、後輩のよい目標になってくれました。本日卒業する多くの皆さんが、日曜日も、長期休暇中も学校に来て受験勉強をしていました。国立大学後期日程を受験した方は、これから、よい結果がでると期待しています。
学校の行事や生徒会活動では、一人一人がアィデアを出し主体的にまたチームワークで活動して、十文字のよい伝統を後輩につないで下さいました。
クラブ活動面では、サッカー部、マンドリン部、バトン部、水泳部等が全国大会で活躍し、舞踊部、演劇部、陸上部それ以外の部活をふくめて、いろいろな領域の33の部と同好会で活躍してくれました。文武両道で部活や学校の活動、自彊術体操、勉強面で女性としての教養を身に着けた皆さんが、本校卒業後も、さらに精進して多様な分野で活躍されることを期待しています。
希望の大学・学部に首尾よく合格し部活などで成果を上げられた方は大学入学後、自分の将来に向けて自彊不息で努力を続けて下さい。一方、残念ながら勉強や、部活で努力をしても、希望が叶えられなかった方もいると思います。しかし、夢をあきらめずに、これも人生の試練だと思って、この山を乗り越えて実現してください。失敗や挫折が皆さんを強く、逞しく育てます。希望の大学・学部に入学することだけが人生の目標ではありません。これからの社会は、今までとは違って何が起こるか予測できない社会なので実力がないと対応できません。
特に、皆さんは、1999年から2000年、つまり、20世紀から21世紀にかけて産まれました。皆さんには、21世紀の日本、さらにアジア、ひいては世界をより良くしていく役割があると信じています。特に、超高齢社会に加速度的に向かっていく日本は、これまでになく女性の力を必要としています。
しかしながら、世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数 男女格差指数では、2017年、日本はなんと、144カ国中114位というこれまでで最低の順位になりました。その主な理由は、女性国会議員、管理職など、リーダーにおける女性の少なさと女性の経済力の低さです。
まず、女性の政治参加の必要性についてお話しします。
日本の国会議員における女性割合で日本は10.1%、なんと192か国中157位です。女性の権利を認めない中近東の国々と肩をならべています。
1994年に民族間で大量虐殺を経験したルワンダが、奇跡的な発展をしています。女性議員の割合が61.3%で世界1、ジェンダーギャップ指数では北欧と肩を並べて4位、アフリカで最も汚職や犯罪が少なく、年8%の経済発展を遂げています。
ジェンダーギャップ指数では1から3位、5位など上位で、女性の政治参加も進んでいる北欧では、福祉・家族など社会政策、環境、教育なの政策が充実しています。開発途上国の子ども、女性、高齢者などに対する北欧諸国の支援は日米より進んでいます。女性が政策決定に参加することで、国の政策は大きく変わりますから、女性の政治参加は大切なのです。また、政治参加とは政治家になることだけではなく、立候補者の主張や政策をよく調べて、必ず選挙権を行使することが重要です。
ところで、先週木曜日3月8日は国際女性デーでした。国際女性デーは、1904年3月8日、参政権を求めて、ニューヨークの女性たちが初のデモ行進を行ったのが発端となりました。国際女性年の1975年、国連は3月8日を「国際婦人デー」と定め、女性の平等な社会参加を推進する日と位置付けました。日本でも3月8日にマーチがありました。日本では、1946年4月10日に日本女性が初めて参政権を行使したことを記念して「女性の日」と呼ばれていますが、大々的なイベントはありません。ちなみに、日本女性に参政権を保証した法律改正を国会に提案した堀切善次郎内務大臣は本校の十文字良子2代目理事長の叔父さまで、十文字一夫理事長の大叔父に当たります。十文字高校の18歳以上の生徒の投票率は高いのですが、卒業後も候補者を見極めて選挙権を必ず行使するようにして下さい。
男女が共に力を合わせて、アパルトヘイト撤廃を求めて1994年に勝ち取った南アフリカ共和国では8月9日が女性の日です。政策へのジェンダー主流化が研究テーマの私は、2000年頃南アで現地調査をしました。現地の研究者・活動家と一緒に女性の日マーチの出発場所に行くために、タクシーに乗りました。男性タクシードライバーに、女性の日に対する意見を聞きました。彼の答えは、「1日だけ女性の日ではだめだ。日々の生活を変えなければ」。南アは女性国会議員の割合は41.8%で世界192カ国中9位、ジェンダーギャップ指数は19位です。国民一人一人の意識が変わらないと社会が変わりません。
次に、経済面での女性のリーダーシップの必要性についても触れます。日本でも女性が重要な消費者であることを認識した企業は、女性を商品開発の責任者に任命したり、女性のアイディアを活用し始めています。女性が活躍している企業は業績が上がるといわれています。それでも、日本の民間企業の課長職以上の女性の割合は、13%で先進国では最低です。しかも、問題は日本の場合、管理職になりたいと思う女性が3割しかいないということです。同じ調査でイギリスでは9割の女性が管理職になりたいと回答していました。おそらく管理職になるとストレスも多く、時間的にも負担が大きいと危惧している女性が多いためかとも思われます。2016年4月から10年間の時限立法として施行されている女性活躍推進法のもとに、企業も行動計画を策定して女性が意欲をもって働き続けられる環境を整え、女性管理職を増やす努力をしています。日本の状況も、皆さんが大学を卒業される時にはかなり改善されているはずですので、その力を十分に発揮してください。
私が昨年まで日本代表をしていた国連女性の地位委員会の第62回会合が12日から始まりました。今年の優先テーマは「農山漁村の女性・女児のジェンダー平等とエンパワーメント達成のためのチャレンジと機会」です。FAO(国連農業食料機構)の調査によると農山漁村女性は世界人口の1/4以上で世界の食糧の安全を保障する大きな力、つまり、世界の食糧の60-80%の生産に女性が関わっているそうです。しかし、農地の1%しか所有していません。アフリカでは女性が農地を所有すると、生産性が20%UPと言われています。女性の土地所有権の拡大だけでなく、農山村女性の教育・訓練、特にSTEM(理工系・数学)教育の重要性が今年も強調されています。

「世の中に役に立つ女性を育てる」という本校の教育理念に沿って、活動している卒業生は沢山いますが、その中の1人を紹介します。大手新聞社の記者をしている森泉さんです。昨年11月8日に行われた中学進路講演会でお話しいただきました。彼女は、在学中、生徒会委員長を中高で歴任し、トイレの改修について生徒会から学校に提案しており、その提案に沿って改修されたことを確認し喜んでいました。現在は新聞記者として、よりよい社会になるように寝食忘れて取材し、その際は取材相手が事件の被害者、その家族であれば、傷つけないで励ますような取材して記事を書き、本校の教育理念を実践しておられます。本校の卒業生らしい活動をしておられるので、感激しました。
2030年には、今ある職業の半数近くがロボットや人工知能によって取って代わられるという予測がでています。さらに、毎年増加する日本政府の国債の額に絶望的にさえなります。しかし、社会がどのように変わろうとも、創立者十文字こと先生や森泉さんのように、常に高い志を持ち、自彊術体操などで心身を鍛え、新しい考えを取り入れ、不断の努力をしていると対応可能です。皆さん全員がおのおのの立場で、自彊不息で努力して新しい日本社会作りに貢献して下さると確信しています。

最後になりますが、保護者の皆様には、本校の教育方針をご理解のうえ、多大なご支援ご協力をいただきました。厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。
お嬢様方は、本日めでたく卒業されますが、2年後には、成人式を迎えます。これからの予測できにくい人生、お嬢様には青春時代を過ごした本校は、心の「ふるさと」です。今年もたくさんの卒業生が1月の成人の日に学園に集まってお祝をいたしました。2年後、さらに成長したお嬢様にお目にかかれることを教職員一同楽しみにして、式辞とします。

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