私は団体競技が好きです。というのは、チームの皆で士気を高め合い、一人のミスは皆でカバーし、ファインプレーは喜び合い、皆で支え合う一体感が好きだからです。それに比べて個人競技はミスをしてもファインプレーをしてもコートの中には自分だけ。支えてくれる人も周りにいない、完全に自分だけの闘いです。そのピリピリとしただだっ広いコートの張りつめた空気が好きになれず、あまり興味を持てずにいました。

私がウィンブルドンで見た試合は女性のシングルスでした。「サーブの時は喋らずに」「ほかの場所でも騒がない」散々言われたルールがその空気を更に緊張するものへと変えていました。私たちの席からコートは近くて、選手の息づかいや表情も、しっかりと見ることができました。選手の片方は緊張に飲まれていて、全力の実力を出せていないように感じました。それに比べてもう片方の選手は、緊張などしていないような凛とした姿をしていました。それはまさに私の思う「個人競技」の姿でした。一人でさびしく、勇ましくプレーする姿も、自分自身の誇りをかけて緊張に打ち勝つように独りもがく姿も、緊張などものともせず、一人で攻め続ける姿も。私にはなぜ、そこまで一人で頑張れるのか理解不能でした。そして強く惹かれました。私にはとうていできないことを、ずっと極めて世界レベルにまで行く人達は、プレーだけではなく、精神も他のスポーツ選手よりずっと強い人だと感じました。

続けられるとは思わないけれど、個人競技も良いかもしれない、とふと思いました。このふにゃふにゃの一人じゃ何もできない自分を少しだけ変えられるかもしれない、とも。そんなことを思えた、素敵なウィンブルドン観戦でした。

(高等部3年生 女子)

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