初めての喧嘩(2)

実はその時、大滝君の頬の右下には、
大きな「おでき」ができていた。

それが治りかかり、厚みのある、直径
5センチくらいのかさぶたになっていた。

北海道では、これをガンベと言う。
アイヌ語なのか、北海道で発生した
方言なの かは分からない。

私の怒りは頂点に達した。「こいつは
絶対に許せない」強くそう感じた。

その瞬間、私の右手は大滝君の大きな
「ガンベ」を、かきむしった。大きなかさ
ぶたが取れ、そこから血が流れ出た。

「大変なことをした。」そう感じつつ、
幼 いながら私は格闘に入る態勢を
取った。

ところが何と大滝君は、「カアチャアン」と
泣きながら自分の家に駆け込んだのである。

大変なことをしでかしたのだから、私も家に
帰り、父にその顛末を報告した。炭坑は
三交代の制度になっていたから、非番
の父は家にいたのである。

「良くやった。これからもその調子で頑張れ」

それが父の言葉であった。 なんともはや、
荒っぽい家庭教育もあったものである。

その3に続く…

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