父与作の失敗(2)

 

傾斜生産で、国家の資源全体が
重点的に投入されるのだから、
炭鉱の景気はもの凄かった。

街々は闇に閉ざされるような時代
だったのに、炭鉱にはネオンサイン
に近いような「照明広告塔」が輝いて
いた。

「掘り出せ 黒ダイヤ」「石炭は 日本を
救う命綱」と言った具合で ある。

賃金ももの凄かったから、農村青年が
次々に炭鉱に向かった。炭鉱住宅の
建設は大変な勢いで進められた。

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与作の小さな組も、この「炭鉱住宅景気」
に大儲けを重ねたらしい。私が中学三年
の頃、「お前が東京の大学に行ったら毎月
五千円送ってやる」と言ったものだ。当時
教員の初任給は二千五百円くらいだった
から、景気の程も知れようと言うものである。

 

その3につづく…

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