種をまく

今年のノーベル文学賞は日本にルーツのある方の受賞とあって、今、カズオ・イシグロさんの本は書店での入手が困難なようですね。

図書館では、英語・日本語(翻訳)、それぞれ3タイトル持っていたので、緊急特集コーナーを設置しています。早速貸し出しがあり、残りわずかですが…

聖学院の図書館には、英語の本が約900冊あります。生徒のリクエストにも応えて毎年着々と買っているので、1000冊を超える日も近いでしょう。読み終わった本を寄贈してくれる生徒もいます。

速読は学習手段としてとても効果があると感じているので、ぜひ応援したいと考えています。『速読クラブ』のような集会を図書館で持ちたい、という司書の野望もあります。しかし、生徒にとっては、英語の本を読むというのは、敷居が高いようですね。帰国生や英語が得意な一部の生徒を除いては、熱心に声をかけ続けても、なかなか反応が薄いです。それどころか、「だいたい英語を勉強する意味がわからない、外国とか興味ないし、行く予定もないし。」と言い出す生徒も。それでも、図書館は、帰国生のためだけではなく、やさしい絵本からカズオ・イシグロさんの本のような文芸書まで、さまざまな本をそろえて、根気強く声をかけ続けます。

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なぜでしょう。種をまくのです。

学校図書館は、最初から本が好きな生徒だけの居場所ではありません。そうでない生徒にも、本を手渡し、図書館で情報を得る手段を学び、それが習慣となるよう支援する、教育の場なのです。だから、私たちは根気強く種をまきます。

「イシグロさんって、長崎出身なんだって、お父さんと一緒」「へー」「今度おじいちゃんの家行ったら、会うかも」「すげー」本を手に取らずに、特集コーナーの前でこんな会話をしている中学生、それだけでも十分なのです。遠い将来、色々なことがつながって、豊かな人生になることを願って、私たちは種をまき続けます。

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