似顔絵1 - コピー (2)昨日、D日程の中学入試が無事終わり、今年度の入試が終了いたしました。コロナ関連の欠席は一人もおらず、万が一のために予定していた追試も行わずにすみました。

毎年この時期に思うのは、入試がゴールではないということです。たまたまご縁のなかった受験生もいます。それはけして自分を否定するようなものではありません。もちろん不合格通知は残念であり、悔しいことでしょう。でも、大切なのは切り替えて新しい道を歩みだすことです。4月から通う自分の居場所(学校)が一番大切な場所なのであり、大好きな場所になるように保護者の方にはお子さんを支えてあげてほしいなと思います。

さて、〖ほりしぇん副校長の教育談義〗第31話は、前回の「美術の授業」に続き「数学の授業」についてです。参観者と一緒に教室を回ることが多いのですが、そこでは様々な発見があります。

 

4 数学の授業―『中1で学ぶピタゴラスの定理』―「?」から「!」へ <中1‐1学期の実践>

 

確か数年前の6月のことだったと思います。コロナなどという言葉がまだ聞こえていない時でした。受験希望者で学校見学に訪れた方を案内していました。中学校校舎をまわりながら廊下から教室の中の中学生の様子を見てもらっています。2階の廊下に出てみると扉の開いている教室があります。せっかくなので教室の中に入ってみました。中1の数学の授業です。

「『cm』は、何を表す単位ですか?」 ― 「長さ!」

「『c㎡』は、何を表す単位ですか?」 ― 「面積!」

「では、4c㎡の面積の正方形を作図できるね? 9c㎡の正方形はどうかな?」

先生が作図するための用紙を配ると、早速生徒は作業に取り掛かります。その様子を見ながら私たちは教室を後にしました。

次の休み時間のことです。授業者のN先生から声をかけられました。「もう少し見ていてくれたらよかったのに!」 どうも私たちが見たものは授業の導入で、小学生でもできる問題だというのです。実は、この授業での本当の課題は、「13c㎡の正方形を作図しなさい」というものだったようです。格段に難しくなります。2乗して13になるのは…と、計算を始めてみました。3と4の間。3.6と3.7の間。実は生徒もそういう計算を始めたそうです。中にはもっと先まで計算する生徒もいるというのです。そんな生徒に授業者は、「でも、そんな細かい数字を作図できる定規はないよね!」と言います。私も頭を抱えました。

先生は生徒たちに次のようなヒントを与えたそうです。「4・9・13という数字で、何か気づくことはないかな?」私には見当がつきません。ただ、中学1年の教室では必ず誰かが気づくと言います。「これを使えばいいのか!」教室の中でだれが最初に気づくのか。たぶんその発言で多くの生徒が「?」から「!」に変わっていくのでしょう。

そこで私は、N先生にそれまでの授業のノート記録を見せてくれるように頼みました。そして「なるほど!」と思うわけです。実はこの授業の数時間前に、以下のような授業があったのです。ここではその一部を紹介したいと思います。

 

課題1

同じ大きさの2枚の正方形を切って、すき間が空かないように並べ替えて、一つの正方形を作りたい。さて、どう切ってどう並べかえればよいでしょうか。

 

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生徒は配られた紙に補助線を入れていきます。特に難しい問題ではありません。でも、ノートを見ると生徒から出てきた考えは5種類もありました。「簡単な問題だ!」と私も補助線を入れ、それで済まそうとしていたのですが、5種類の考えを眺めながら「?」、頭が動き始めるのを感じます。生徒から出てきた考えは次の通り。発表者はなぜそれが正方形になるのかを説明できなければなりません。

 

<生徒の考え>

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ここから議論が始まります。まずは、ウに対して反論があがりました。説得力のある説明をしなければいけません。答えが合えばいいということではありません。次のように小さな正方形に1~32の数字を書き入れた上で説明が始まりました。

 

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「小さな正方形を何枚か使って大きな正方形を作るためには、縦の枚数と横の枚数が同じである必要がある。たとえば2×2=4(枚)、3×3=9(枚)、4×4=16(枚)というように。でも、同じ数×同じ数で32になる数はない。だからこの方法では大きな正方形にはならない。」

 

次は、オについての反論です。裁ち合わせをすると正方形の四隅が欠けてしまいます。ウやオに賛成した生徒はごくわずかですが、なぜ間違いなのか言葉で説明することも大切な学習なのです。

続いて、エへの反論です。こちらは、正方形の四隅に紙片を置くことはできます。でも、ぴったりとははまりません。なぜでしょうか? 「四隅に置かれた四角形は正方形ではありません。1辺は大きい正方形の五分の一、もう一辺は四分の一、だからはみだしてしまう。」

 

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アとイには、反論はおこりませんでした。ただ、イよりもアの方が断然シンプルであることに当然のことながら気づきます。実際にハサミで紙を切って確かめてみます。

 

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これは実は次の課題のための導入の課題でした。

 

課題2

サイズの異なる2つの正方形を裁ち合わせて、一つの正方形を作りたい。さて、どう切ってどう並べ替えればよいでしょうか。

 

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生徒たちは必死に鉛筆を動かし、悪戦苦闘します。でも、なかなか正解を見つけられません。生徒のノートを見ると、その跡がはっきりと残っています。そのプロセスこそが生徒を知的に育てます。

 

皆さんなら、どのように考えますか? 続きは次回のブログでご紹介します。

 

(中学校副校長 堀内)

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