4月8日(木)山脇学園中学校入学式を行いました。

生徒は講堂で1席ずつ空けて座り、保護者は教室から中継映像を視聴する形で挙行しました。

今日から始まる山脇学園での生活。人生を共にする新しいクラスメート。春風と共に、一人ひとりの新しい「志」が校内を包みこんだ1日となりました。

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【山脇学園中学校入学式式辞】

この4月より山脇学園校長として就任いたしました西川史子と申します。

ただいま入学を許可いたしました279名の新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。厳しい入学試験に合格し、本日晴れて本校の生徒となられた皆さんを、本学園教職員一同、心から歓迎いたします。また保護者の皆様におかれましても、これまで慈しみ育てられたお嬢様のご入学をどれほどお喜びのことかと存じます。心よりお祝い申し上げます。

今日、この日に皆さん一人ひとりのお顔を拝見し、お会いできたことをとても嬉しく思います。真新しい制服は皆さんにとても似合っていて、中学生になったのだ、という清々しさが伝わってくるようです。

これまで皆さんは、遊びたい気持ちを抑え、受験のための勉強に取り組んでいらしたことでしょう。時にはつらい、苦しいと思うこともあったでしょうし、思うように成果が上がらないときはもうやめてしまいたいと思ったこともあったかもしれません。しかし今日、この日を迎えることができた皆さんは、そのような経験をすべて乗り越えてこられたのです。最後まで諦めずに頑張りぬいたことを心から称えたいと思います。また、その経験はこれから始まる学園生活の中にも必ず活かされると思います。

それらは決して一人で乗り越えてきたことではなく、一番近くにはご家族、そして周りには先生や友達の存在がいつもあったことでしょう。特にこの一年は、新型コロナウィルスの脅威を感じながら勉強を続ける日々だったと思います。周りの方は皆さんを守ろうと心を砕いてくださったと思います。この喜びの日に、そばで支えてくださった方々に思いを寄せてください。

さて、山脇学園での生活をスタートされるにあたり、本校のことについて少しお話をしたいと思います。山脇学園は明治36(1903)年に創立されました。創立者であり、初代校長は山脇房子先生です。明治という時代にあって、女性が教養を磨き、社会で活躍することを願い、本校を設立して女子の教育にあたりました。また英語教育の重要性を説いたり、日本で最初の洋装の制服を取り入れたりしたのも房子先生でした。このワンピースの制服は、今もほぼデザインを変えずに、山脇生が誇りをもって着用しています。

校章も房子先生の先進性と思いを感じるデザインです。ハートに富士、いつも心に富士の姿を。房子先生は、富士山を女性の理想の姿とし「秀峰三姿」として、3つの心がけについて述べています。

一つ目として、「いつどこから見ても変わらぬ姿」です。富士山は、何時どこから見ても凛とした美しい姿です。このように人も、裏表なく、またどのような時にも、平常心を保つこと

二つ目として、「清らかで穢れなき心」です。心に穢れを持たず、偽りのない日を過ごすこと

三つ目として、「感情を抑える克己心とおだやかで平和な姿」です。富士は火山の一つでありますが、表面は非常におだやかに平和の姿をしています。「気持ちがたかぶることがあっても、静かにこれを抑える克己心をもつこと

 

また、房子先生の著書「尊き花 尊き実」には、房子先生の願いやお考えが細やかに記されているのですが、もうひとつ、今日、是非皆さんにお伝えしたい部分があります。

それはこの著書の最初の章に記されている部分です。そのままご紹介しましょう。

 

富士の姿を心として人は誰でもいろいろの望みを持っております。偉い人になろう、優れた人になりたいと思っています。日本一の学者になりたい人もありましょうし、また日本一のお金持ちになりたいひともありましょう。日本一の美しい人になりたいという人もあるでしょう。そしてそれはまことに結構なことであります。

が、果たしてその望みが通るでしょうか。それはほんとに難しいことで、誰もがどんなに努めても到底達しえない望みではないでしょうか。

けれどただ一つ、誰にでも努力次第でできることがあります。それは徳の高い人になることであります。徳を磨き、徳を積んで、徳の高い人になることは、自分の心がけ一つでできるのであります。」

 

「徳の高い人」といって、皆さんはどんな人を思い浮かべるでしょうか。思いやりのある人、笑顔の絶えない人、頑張っている人、助けてくれる人、リーダーシップのある人、謙虚な人、裏表のない人など 様々なイメージが浮かぶと思います。「徳のある人」とはどんな人なのか、これから一緒に考えていきたいと思いますが、「徳」とはその人の身に備わった品性、といえるのではないでしょうか。そしてそのような人になりたいと思えば、誰でも努力次第でなれるのですよ、という言葉は、今も昔も変わることのない房子先生からのメッセージのように思えるのです。

房子先生は山脇生に、どのような時代にあっても、品性を携えた凛とした姿で社会に貢献する人になってほしい、という願いを持っていました。山脇生はこれを生涯のテーマとして受け取り、人生の様々な場面において行動を迷ったとき、自分の中にある「徳」に照らして考えることのできる人になってほしいと思います。

建学の精神や理念は、時代は変わろうとも受け継いでいくべきものです。ただし創立者の当時の言葉をそのまま受け入れることではなく、創立者の理想の本質の部分を現代に当てはめて継承していくことが求められていると考えています。

山脇学園は118年の伝統を持つ学校ですが、ずっと変わらないことが魅力なのではなく、ゆるがない土台を持ちつつも、その時代に合った形、この先の未来を見通した形に進化し続けていく学園でありたいと思います。

これからみなさんが生きていく未来は、情報にあふれ、国際化が進み、価値観も多様化し、答えがひとつではない問いが日々投げかけられる社会です。このような社会では、自分の頭で考え、軸を持ち、心で感じたことを的確に表現する力、しなやかに物事に対応し、道を切り拓いていく力が求められます。

私たちは、中高6年間の、人生で最も心身の成長が著しい時期に、そのような力をつけてほしいと考えています。そのために、これからみなさんは、与えられることを待つのでなく、自分から道を探し、行動してほしいと思います。

ここで学んだことはすべて、自分の未来を高い視点から広い世界を見渡すことにつながります。

自分の枠を決めずに、好奇心を持ち、失敗を恐れずにチャレンジすること、自分の限界まで頑張る経験をすることこそが、自分が持っている本当の力を知り、学びの世界を知り、これから進むべき道を見極めることに繋がります。山脇学園には、それができるチャンスや経験の場にあふれています。

本校は赤坂というこの場所に、恵まれた校地と充実した学習環境を持っています。また、1学年280名という大勢の生徒と、120名以上の教員がいます。たくさんの先生との出会いがあり、そこで行われるすべての教科の授業が、みなさんの豊かな人間性、知性や感性をつくることに関わっています。

また、本校が用意している数多くの国際教育プログラムや科学研究プログラムは、みなさんのなかに多様な価値観を知り、表現する力や、ものの見方・考え方を知り、探究する力を育てることでしょう。本物に触れ、たくさんの友だちと学び合う経験の積み重ねは、みなさんがどのような分野で社会に貢献していくかを考えるうえで、多くの気づきをもたらしてくれるはずです。

変化し続ける社会の中で、学校や教育のありかたは大きく変わろうとしています。学習ツールも目覚ましく発達し多様化して、みなさんが求めれば、学びの世界は無限に広がっていく時代です。

本校は今年度よりiPadを導入しました。昨年度より校内で行ってきた研修では、学びの可能性が大きく広がることを実感しました。授業の世界が変わる、といってもよいくらいです。どうぞワクワクした気持ちで取り組み、自分が主体となって学ぶ楽しさを味わってください。

私は長く山脇学園に勤務し、その間、多くの生徒と出会い、卒業生を見送りました。優しさや素直さ、ひたむきさにあふれる山脇生が大好きで、また卒業して様々なところで生き生きと活躍しているたくさんの卒業生をとても誇りに思っています。

昨年は、医療現場で働いている卒業生が、何人も「頑張っています」とメールをくれました。また、ピアノでドイツに留学している卒業生は「今年は国際コンクールもリモートになりました」と出場したその時の演奏動画を送ってくれました。「今は会社に行けないので、リモートで仕事をしています」「今は安全に育児をすることに専念しています」などなど、それぞれの卒業生たちが困難に負けることなく、それぞれの場で活躍していることを感じ嬉しく思いました。みな、山脇で中学高校時代を過ごし、経験したことや学んだことを礎とし、誇りとして、人生を歩んでいます。そして今日山脇生になられたみなさんも、そう感じられる日々を送って頂きたいと願っております。

今、みなさんの周りにいるのは、これからともに過ごし、学び合い、影響を与え合う友達です。また、今日出会った新しい担任の先生、学年の先生方のほかに、様々な教科の先生方との出会いもあります。どの先生も情熱にあふれ、皆さんと過ごし、ともに学ぶことを楽しみにしています。また上級生も、みなさんの入学を心待ちにしています。部活や行事を主体的に運営し、ひたむきに様々なことに打ち込む先輩たちの姿から、学ぶことも多いことでしょう。

みなさんを取り巻くたくさんの人たちから、みなさんはたくさんのものを受け取り、そしてみなさんも周りの人にたくさんのものを与えていきます。異なる感じ方や考え方から自分では気づかなかったことを発見することもあるでしょう。誰かが何かに頑張っている姿に憧れ、私も頑張ろうと励まされたりすることもあれば、誰かの意外な弱みに気づいて応援したくなることもあるでしょう。

どうぞ、人の心と大切に向き合い、言葉や対話を大切にしながら、豊かな人間関係を築いてください。一生の友が、必ずできます。そしてみなさんの山脇での6年間が、安心で楽しく、充実したものになるよう、先生方は常に見守り、支援していきます。

最後になりましたが、保護者の皆様に申し上げます。今日は画面越しに式をご覧いただくことになりました。ご理解とご協力、まことにありがとうございます。

本日お嬢様は、緊張感の中にも、とても立派なお姿でこの場にいらっしゃいます。この度、大切なお嬢様をお預かりすることになり、改めまして身の引き締まる思いがいたします。教職員一同、心を合わせ、お嬢様の教育に全力を傾けてまいります。

新入生のみなさんが心身ともに健やかに、有意義な学園生活を送られることを心より願い、本日の式辞といたします。

                         令和3年4月8日 西川史子

【在校生代表 歓迎の言葉】

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葉桜が目に映える季節となりました。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。

私達在校生は、皆さんをお迎えするこの日を心から待ち望んでいました。

皆さんは今、これから始まる学校生活へのたくさんの期待と少しの不安で胸がいっぱいのことと思います。中学高校の生活では、初めてのことや、小学校の時と比べて、物事を自分で決断する機会も増えると思います。困難に立ち向かわなければならない場面もあるでしょう。一人で大変な時は、周りにいる友人や、先輩、先生方に相談してみましょう。そして誰かが困っている時は支えてあげましょう。

また、これからの生活では、たくさんの行事を経験することになります。夏季学校や、山脇祭、体育祭、合唱祭など、クラスや部活で絆を深めたり、様々なことに挑戦したりと、忘れられない思い出が増えていくことと思います。私は卒業が近づいてきている立場ですが、今までの行事を振り返ってみると、その当時の楽しかった思い出がたくさん蘇ってきます。その経験を通して成長した今の自分があるのだと感じています。皆さんも一つ一つの行事を思う存分楽しんで、充実した学校生活を過ごしてください。

最後に、山脇学園は明るく優しい生徒が多いと思います。周りにいる仲間の存在が良い刺激となり、学業やその他の生活で切磋琢磨し合える環境です。六年間は長いようであっという間だと思います。与えられた時間で、様々なことに挑戦していってください。これから、山脇学園で共に学び、楽しい思い出をたくさん作っていきましょう。皆さんの学校生活が有意義で、素晴らしいものになることを願っています。

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