初めての喧嘩(1)

狭山ヶ丘高等学校長 小川義男

生来おとなしい性格だと思うのだが、
人と争ったことがないわけではない。

今日は、私の記憶に残る一番古い
喧嘩の記憶に触れたいと思う。

相手は大滝君という二年生。私は
一年生であった。古い記憶だから
前後の脈絡は分からない。

斜面の上に建てられた炭坑長屋の
前庭でのことである。前庭 と言っても、
別段広い庭があるわけではない。その
少し向こうは急峻な崖であ る。落ちると
困るので、簡単な垣根がしつらえられて
あった。

その狭い場所に、 茣蓙を広げて大滝君
と三人くらいの女の子が遊んでいた。私も
それに加わる形で茣蓙の上に座っていた。

大滝君は生来我が儘な子のようであった。
いつも無理を言って女の子や小さ な子を
泣かせていた。その時も大滝君は、幼い
私の判断では絶対に許すことのできない
我が儘な言動を取っていたらしいのである。

二年生だし背も高く体力 もある。とても
戦って勝てる相手ではない。しかし、その
内容、理由は覚えていないのだが、
「これは許せない」と全身の血がたぎり立った。

その2に続く…

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