初めての喧嘩(5)
ひとつとして私は、己自身が不利益に
扱われたというようなケースでは、滅多に
憤慨しないことを知った。
これが個性というものであろう。
他人が理不尽に扱われたときにのみ、
著しい憤慨を覚えるという、この個性は、
果たして良いものなのかどうか、それは
今も分からない。
今ひとつ、「感情は力関係に従属する。」と
いうことを、私は人生の様々な場面で体験した。
葛藤では、負けないことが大切なのであって、
勝利した後、相手と感情的にまずくなると言う
ようなことは心配する必要がない。
これは私の個性と言うよりは、何人も否定できない
人生の真理なのではないだろうか。
「人間に生まれながらの能力差はない」
これは私の、現場実践に裏づけられた信念で
あるが、個性となるとそうはいかない。
どうも人間は、生まれながらに様々に異なる個性を
持って、この世に送り出されてきているものらしい
のである。
それぞれが、いかなる先天的個性を持つ存在で
あるのか、そのあたりを深く 理解することから
出発しなければならないと思うのである。
<完>