今日は終業式です。入学からはや4か月経ち、1学期が終了します。

 

 

2014年度7月18日  中学校第1学期終業式 校長講話

 

  いよいよ明日から44連休が始まります。夏休みに当り、1つだけお話しをします。

  それは、先日閉幕したワールドカップブラジル大会からのお話しです。今回の出場は

32ヶ国でした。その中に、今大会唯一の初出場国、ボスニア・ヘルツェゴビナという国が

ありました。これまでの、ワールドカップの歴史の中で、ワールドカップに出場した国は

通算77ヶ国あるそうです。その中で、初出場で1勝以上をあげた国は、わずか9ヶ国しか

ありません。その9ヶ国目が、このボスニア・ヘルツェゴビナでした。

 

すでにグループリーグ敗退が決まっていた最終戦で、ボスニア・ヘルツェゴビナが、

イランに勝利しました。この勝利を、歴史的初勝利だ!とボスニア国内はもとより、

世界中が称えました。その背景にはいったい何があったのでしょうか。

 

 このボスニア・ヘルツェゴビナという国は、元々は旧ユーゴスラビア(現在の

セルビア・モンテネグロという国)という国の一部でした。そして、1992年、

ボスニア・ヘルツェゴビナは、旧ユーゴスラビアからの独立を宣言しましたが、

この旧ユーゴスラビアには、大きくは三つの民族が住んでいました。

 

ボスニアの独立に賛成派・反対派があり、やがてその対立が激化し、戦闘状態に

陥りました。1995年、三年半に亘る紛争の末、和平交渉が成立し停戦となりま

した。この3年半にわたる戦闘で、死者20万、難民・避難民200万が発生したと

言われています。そのボスニア紛争が終結して19年がたちました。

 

しかし、この民族間のわだかまりは根強くなかなか消えていませんでした。

そして、同国サッカー協会内には、対立する三民族がそれぞれに会長を立てる

などという不和が続き、ついに国際サッカー連盟(FIFA)はボスニアの出場

資格停止処分を決定しました。

 

 そんなピンチを救ったのが元日本代表監督のイビチャ・オシム氏でした。

オシム氏は、協会の正常化委員会座長に就任すると、ねばり強い説得を続け

ながら、民族間の緊張を和らげ、三つの民族をまとめ、やがてFIFAは、

出場資格停止処分を解除することになりました。

 

  今回の歴史的な勝利を見つめていたオシム氏が目に大粒の涙をたたえながら

インタビューに答えているシーンが紹介されていました。

  ボスニア・ヘルツェゴビナは、紛争終結後も、国は荒れ、満足な練習施設もない

状態が続いた。今回の出場選手は、子供のころから小学生時代を戦闘状態で過ごし、

サッカーの練習も周りが暗くなってから命がけでやったと答える選手もいる。

 

そうした選手にとって、ワールドカップでの1勝は、不幸な戦争を乗り越えての勝利だ。

そして、まとめとして

 「真の成功とは、その成功を繰り返すことで身に付いていく。」

 「真の成功とは、その成功を繰り返すことで身に付いていく。」

と独特の表現でこの勝利を称えました。

 

  私は、このことを、日本に置き換えてみました。1945年、日本は敗戦国となりました。

そして、19年後の1964年、日本は東京オリンピックの開催にこぎ着けました。

東京オリンピックの開催は、戦後の復興を世界にアピールし、まさに日本人が自信と

勇気を取り戻す機会となりました。ボイニア・ヘレツェゴビナも同様に、ボスニア紛争

から、ちょうど19年目にして、ワールドカップへの初出場、そして、そこでの一勝は、

ボスニア国民にとって苦難の歴史を乗り越えたという勇気と自信を与えた一勝であったに

違いないし、是非そうあって欲しいと思っています。

 

 今、日本の国内では、集団的自衛権の問題が国会審議の真っ只中にあります。

そんな中、八月には、広島・長崎の原爆記念日もやってきます。また、私達が毎日使う

電気エネルギーについても、原子力発電所を再稼働していこうという話しも持ち上がって

きています。そんな中で、私は、先ほどのオシム氏の言葉が気になってなりません。

オシム氏は、とにかく成功を積み重ねることが大切であると強調しています。私は、

日本が戦後69年間、平和を守り続けてきた重み、エネルギー政策でも福島第一原発の

過ちを繰り返さない決意、今こそ、積み重ねていくことが必要だと強く思っている一人で

あります。

 

  皆さんにとっても人生にたった一度だけの2014年の夏です。今日話したようなことも

含め、自分の身の回りで起こっていることに興味を持ち、『行動する哲人』に一歩でも

近づく過ごし方をして欲しいと思っています。

 

 それでは、皆さんの2014年の夏が充実した有意義な夏休みにしてなることを期待し、

一学期終業式にあたってのお話しとします。

 

千葉明徳中学校・高等学校

                                                                                校長 園部 茂

 

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