夜10時を過ぎて、妙高高原にあるホテル金甚の食堂では、高等科2年生34名が苦しくも濃密な時間を噛みしめていました。
彼らは4泊5日のスキー実習を行なっています。
普通に考えれば楽しくスキーに親しむ機会ですが、本校では夜に懇談の時間を持ちます。
目的は高等科3年生になる準備をすること。
受験一直線の世のなかの高3とは異なり、本校の高等科3年生は学校の自治の責任を担います。
一番の責任は生徒だけで生活する寮の責任です。
生徒たちも自分たちを育ててくれた上級生をケースモデルに掲げながら、よりよい学校、よりよい寮を目指しています。
「入学者のご両親は、この学校のシステムを理解したうえでぼくたちを信頼して『宝』を預けてくださる。このままのぼくたちでいいのか。」
「ぼくたちが不安に思っているなかでも、入学者のご両親はすでに覚悟を決めている。ぼくたちも覚悟を決めるべきではないのか。」
といった意見から、徐々に議題は、与えられる責任そのものについてではなく、それを受ける自分たちの問題に移っていきました。
34人全員が思いを一つにして進みたい、という思いから
「これまで話していない人もこれからどうありたいのか本音を話してほしい。」
「これまで何度も何度もみんなに働きかけてきたが、なにを言っても流されてきている。受け止めてもらえないのは苦しい。」
と迫る場面もあり、話し合いは11時過ぎにまで及びました。
このような経験は、現在、社会で強く求められているコミュニケーション能力と組織内の問題調整能力の生きた鍛錬の場です。
社会に出てからも、それぞれの活躍の場において、大切な働きを担いうる人間となると信じています。