金曜日夜6時半、食堂には全校生徒が集まり、学年を超えて思いをぶつけあっていました。
本来ならば生徒たちはとうに帰宅し、寮では夕食が終わる時間です。

本校の自治教育の根幹を担う、委員会の選出選挙を木曜日に行なうはずでした。
しかし選挙前日の水曜日、今回は投票ができないという訴えが下級生から寄せられました。
副委員長を選出する高等科2年生の生活態度などに対する不満でした。
その思いを現委員長は深刻に受け止め、木曜日には選挙ではなく全校討議を行いました。
その場では、下級生からも上級生からもさまざまな意見が飛び交いました。
高2、高3は学年でも話し合いを続け、翌日金曜日に選挙を改めて行ないました。
しかし一票の白紙が投じられました。
無効票として処理するべきか、一人の意見として受け止めるべきか、部全体は真っ二つに割れて話しあいました。
無効票として処理しなければならない、それでも投票した人にはみなの前に出て意見を言ってほしい、と委員長は訴えました。
一方で、事前に話し合う機会を設けたにもかかわらずこういった表現でしか伝えられない思いを、深刻に受け止める必要があるのか、と
いう意見もありました。
結果として再選挙が行なわれたのは6時半過ぎ。生徒を帰したのは7時を回っていました。

翌日、土曜日。
新しく委員長に就任した高等科3年生のM君は全校生徒の前で次のように訴えました。
「この学校に白紙投票はあってはならない。それは生徒として無責任な行為だ。だからこれからは、何か思うことは、言葉で伝えよう。
しかし、選挙で白票を投じた人だけが無責任だといえるのだろうか?
委員会の呼びかけに答えない人、掃除など与えられている責任を果たすことができない人も、同じように無責任なのではないだろうか。
 この学校の生活には、大変なことや面倒くさいことがたくさんあるが、大変だからやらないのではなく、
一つ一つのことをよく考えて行動できるようにしよう。」

この苦しみが成長の糧となった、と生徒達が気付くには、もう少し時間が必要かもしれません。
それでもこのような場を大切にしたい、と自分たちで考え、逃げずに向き合うことができました。
苦しみながら答えのない問いと向き合い、自分や団体の在り方について考えを深め、互いに思いをぶつけあう。
成績にも進学実績にも表れない、本校ならではの学びです。

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