校長メッセージ(12) 卒業生へメッセージ!! (2017年03月24日)

高校卒業式

 

 

 

 

 

 

 

皆さん、ご卒業おめでとうございます。

本日、ご多用中にもかかわらず、多数のご来賓、保護者の皆様方のご臨席を賜りありがとうございます。
ただ今、十文字高等学校での3年間の学園生活を全うされた330名の卒業生の皆さまに卒業証書をお渡ししました。保護者の皆様にも感慨ひとしおのことと存じます。
皆さんは2014年4月に、私が校長として始めて高校入学式で受け入れた学年です。それ以来3年間、本校の教育理念である「身を鍛え、心鍛えて」、つまり、文武両道で頑張ってくれました。
まず、勉強面では、先生方や保護者の皆様のご支援の元に、皆さんは3年間努力し、後輩のよい目標になってくれました。これから国立大学の入試が待っている人もいますが、初志を貫徹してください。
クラブ活動面では、サッカー部が第25回全日本高校女子サッカー選手権大会で宿願の初優勝という本校にとって歴史的な快挙を遂げてくれました。決勝戦にはバトン部が寒い中、チア・リーダーになり、優勝パレードでは吹奏楽部が先導するなど、部の間の協力も素晴らしく、教職員も支援して下さり感謝しています。
マンドリン部は全国高校ギターマンドリン大会において、高1の2014年7月、本校としては初めて文部大臣賞を受賞し、2年の時は、全国知事会賞、今年度はイタリア総領事賞を受賞しました。
バトン部も今年は6年ぶりに中高ともに全国大会、水泳部は毎年ライフセービングで全国大会に出場し、入賞しました。
演劇部も、2014年8月、韓国の高校演劇全国大会に日韓友好ということで特別出演しました。個人でフロアボール-19世界大会に副キャプテンとして出場した生徒もいます。それ以外の部活でも、いろいろな領域で活躍してくれました。文武両道で部活や自彊術体操、勉強で女性としての教養を身に着けた皆さんが、本校卒業後も、さらに精進して多様な分野で活躍されることを期待しています。
教養は、皆さんの人生を豊かにする切り札です。これからも自彊不息で勉強や活動を続け、豊かな教養を身に着け充実した人生を送ってください。
本日卒業する多くの皆さんが、高校3年になって、日曜日も、長期休暇中も学校に来て受験勉強をしていました。首尾よく希望大学・学部に合格した方は入学後に自己の目標へ向けて、最大の努力をしてください。
また、残念ながら努力をしても、希望の叶えられなかった方もいると思います。しかし、夢をあきらめずに、これも人生の試練だと思って、この山を乗り越えてください。それがあなたを必ず強く、逞しく育てることになると信じるからです。希望の大学に入学することだけが人生の目標ではありません。これからの社会は、今までとは違って何が起こるか分からない社会なのです。
ところで、1998年から1999年、つまり21世紀の直前に産まれた皆さんには、21世紀の日本、さらにアジア、ひいては世界をより良くしていく役割があると信じています。特に、超高齢社会に加速度的に向かっていく日本は、これまでになく女性の力を必要としています。
しかしながら、世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数では、2016年、日本はなんと、144カ国中111位というこれまでにない低さになりました。その主な理由は、女性国会議員など、リーダーにおける女性の少なさと女性の経済力の低さです。
まず、女性の政治参加の必要性についてお話しします。
日本の国会議員における女性割合は9.3%で、193カ国中157位。女性の権利を認めない中近東の国々とくつわをならべています。安倍政権は、女性活躍により日本の経済発展を目指しているにも関わらず、政策決定をする国会がこの状況です。1994年に民族間で大量虐殺をしたルワンダが、奇跡的な発展をしています。女性議員の割合が世界1、アフリカで最も汚職率、犯罪率が低く、年8%の経済発展を遂げています。よく考えて選挙権を必ず行使して下さい。
女性の政治参加において先進国の北欧では、福祉・家族など社会政策、環境、教育などの政策が充実しています。開発途上国の子ども、女性、高齢者などに対する北欧諸国の支援は日米より進んでいます。女性が政策決定に参加することで、国の政策は大きく変わりますから、女性の政治参加はたいせつなことなのです。
さらに、経済面での女性のリーダーシップの必要性についても触れてみます。日本でも女性が重要な消費者であることを認識した企業は、女性を商品開発の責任者に任命したり、女性のアイディアを活用し始めています。女性が活躍している企業は業績が上がるといわれています。それでも、日本の民間企業の課長職以上の女性の割合は、先進国では韓国に次いで低い12.5%です。中央省庁の女性管理職割合はさらに低く、4.1%にすぎません。しかも、問題は日本の場合、管理職になりたいと思う女性が3割しかいないということです。同じ調査でイギリスでは9割の女性が管理職になりたいと回答していました。おそらく日本では管理職になるとストレスも多く、時間的にも負担が大きいと危惧している女性が多いためかとも思われます。昨年から施行されている女性活躍推進法のもとに、企業も行動計画を策定して女性が意欲をもって働き続けられる環境を整え、女性管理職を増やす努力をしています。まだ、世界の流れからは大きく遅れていますが、徐々に改善されています。
卒業生の皆さんは、本校の教育理念「世の中に役に立つ女性」になれるように、卒業後も自彊不息で頑張って女性リーダーになったり、社会を支えて、すべての人が住みやすい社会を作ってください。
そのような社会を作りたいという志を持っている卒業生は沢山いますが、その中の1人を紹介してみましょう。その方は、薬学部を卒業後、製薬会社で6年間 MR(医薬情報担当者)として働いていて、2月8日の中学生の進路講演会の講師にきていただきました。彼女が働いている営業所で女性のMRは一人だけだそうです。彼女の夢は、製薬会社でもっと女性が活躍できるような職場環境を作るポストに就くことです。彼女は在学中普通の生徒だったそうです。しかし、社会に活躍する夢を育むという創立者十文字こと先生の意思をきちんと受け継いでいることに感動しました。また、女性の地位の向上は、私のライフワークですので、本校の卒業生らしい女性を社会に送り出すことができて、とてもうれしく思いました。
現在女性が経済力を付けるためにエンパワーすること(Women’s Economic Empowerment WEE)の重要性は、日本だけでなく国際的な認識となっています。「変化する仕事の世界における女性の経済的エンパワーメント」は、13日から2週間、NYの国連本部で開催される第61回国連女性の地位委員会の優先テーマになっています。私も皆さんの卒業式が終わると、日本代表として出席します。
関係のテーマとしては、女性の労働への参加増進、女性が付けない職種を減らすこと、女性が起業する際の制限撤廃、男女間賃金格差の撤廃、女性たちに対する科学技術の教育訓練の推進などです。このようなことを進めるために、法律の改正などが必要ですが、同時に女性の経済活動を禁じたり、妨げる社会規範をなくすことが先決です。イスラム教原理主義の国の中には、女性が外で働くこと自体を宗教の教えの元に禁止した国がありましたが、状況も少しずつ改善しています。ロシアは、ソ連の時代には宇宙飛行士を始め、女性もほとんどの職業に就けました。しかし、プーチン政権下、乗客15名以上のバス運転手、大工、消防士など450職種を女性にとって「危険で過重」な労働として就業禁止とし、国連から勧告を受けています。
今回の国連の会議では、このところ増えてきたGIGエコノミーにおける女性被害者の対策も検討課題です。GIGエコノミーとは、インターネットができる環境であれば、会員登録するだけで、時間や場所を選ばず、誰でも簡単に在宅ワークが、すぐにでも始められ、簡単な仕事から専門知識や技術が必要な仕事まで、多種多様な仕事が豊富にある経済のことです。一方働き方/賃金などについて規制がないため、特に女性に問題が起こりやすいのです。
この国連女性の地位委員会は、すべての女性たちが安心して働ける環境を作るために、夜中まで討議し、最後に、国連、ILO など国際機関、各国政府、民間企業、市民社会などがやるべきことをまとめることになっています。
ところで、史上最年少でノーベル平和賞を受賞したマララさんは皆さんより1才年上の19才ですが、マララ財団を設立して、少女に対する教育を進めることが国の経済発展につながると主張しています。
皆さんはこれから大学などに進学して、専門的な内容を学び、研究して自分の人生を支えるために、さらなる自分のキャリアづくりを始めることになります。その際、可能な限り、マララさんのようにより多くの少女が教育を受けられる世の中になるような活動にも忘れずに関心を持ち続けて欲しいと思っています。
本校は、1922年以降、社会に貢献する女性を育成するため、自彊不息の精神のもと、3万人以上の女性の人間力を育て世に出してきました。この精神を生涯で実践されたのは、創立者である十文字こと先生です。2030年には、今ある職業の半数近くがロボットや人工知能によって取って代わられるという予測がでています。しかし、社会がどのように変わろうとも、創立者こと先生のように、高い志を持ち、心身を鍛え、新しい考えを取り入れ、不断の努力をして下さい。卒業後は皆さん全員が「世の中にたちてかひある人になる」と確信しています。

最後になりますが、保護者の皆様には、本校の教育方針をご理解のうえ、多大なご支援ご協力をいただきました。厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。
お嬢様方は、本日めでたく卒業されますが、2年後には、成人式を迎えます。これからの多難な人生、お嬢様には青春時代を過ごした本校が、母校であり、心の「ふるさと」です。今年もたくさんの卒業生が1月の成人の日に学校に集まってお祝をいたしました。2年後、さらに成長したお嬢様にお目にかかれることを教職員一同楽しみにして、式辞とします。
2017.3.9 十文字高等学校 第69回卒業式 より

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