第100回全国高校サッカー選手権大会 山梨県大会

100分の死闘、力尽きる!!

全国選手権出場、韮崎に阻まれる!

第100回全国高校サッカー選手権大会
山梨県大会 準決勝
日大明誠 前半 韮  崎
後半
延長前半
延長後半

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手塚秀昭のホイッスル

tezuka

第100回全国高校サッカー選手権大会山梨県大会5日目は、10月30日(土)、甲府市のJITリサイクルインクスタジアム(今年度より名称変更)で準決勝2試合が行われ、山梨学院、韮崎の2チームが決勝に進出した。

準決勝の相手は県リーグ(1部)で2度対戦して、いずれも敗れている‘公立の雄’韮崎高等学校(以下、韮崎)であった。コロナ禍による規制も緩和され、この準決勝から一般客も入場可能になった。応援場所が2ヶ所に限定され、バックスタンドに部員、一般生徒、学校関係者、メインスタンドの一角に保護者、OB等合わせて約1000人がスタジアムに駆け付けた。Jリーグ仕様に完璧に整備されたピッチに、目にも鮮やかな本校の桜色と韮崎のグリーンのユニフォームが見事なコントラストを描き、本校のキックオフで試合が開始された。

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前半開始直後はお互い静かな立ち上がりであったが、7分、本校に待望の先制点が生まれた。中盤でボールを細かく繋ぎ、オフサイドラインぎりぎりに左サイドを抜け出した⑨粟生田にパスが通り、そのクロスをゴール前に走り込んだ⑩大月が難なく決めた。準々決勝でも得点した2人の働きが見事なコンビネーションを生んだ。対する韮崎は、本校陣内で③がロングスローを駆使し徐々に試合のペースを掴み始めた。さらに⑦が中盤で運動量豊かにボールに絡み、前線の⑩⑪にボールをフィードしシュート数が増えていった。押し気味の韮崎は、26分、左CKを③がファーポスト側で合わせ同点とした。その後はお互い決め手なく前半を終了した。

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後半に入ると、本校は再三再四②津田が右サイドを駆け上がり、積極的にボールに絡み攻撃に厚みが出始めた。その後、10分前後にお互いに1枚目の交代カードを切り試合の活性化を図った。18分、本校はそれまで攻撃の起点となっていた大月がクロスを上げ、折り返しからチャンスを作ったが惜しくもゴールライン上で韮崎GKに防がれ得点とはならなかった。韮崎は2人目を交代し最終BKラインから中盤で細かく繋ぎ本校ゴールに迫ろうとするが、④安達が空中戦で抜群の強さを見せ、機を見てビルドアップの起点となり攻守に渡りチームを支えた。終了近くになると攻撃の時間を増やした韮崎は、CKやFKのセットプレーで攻め入るが、ゴール前のラストパスの不正確さが目立ちそのまま延長戦に突入した。

延長前半開始直後、韮崎は③の得意のロングスローが1人を経由し本校ゴール前に流れ、混戦からのこぼれ球が本校ゴールラインを割りこの試合初めてリードした(公式記録はオウンゴール)。今度は追う立場となった本校は、6分、CKを獲得し、キッカー津田の良くコントロールされたボールがファーポスト側まで伸び、⑤柴田が高さのあるヘディングで決め試合を振り出しに戻した。

延長後半、本校は⑪平田に代え⑲久保を投入し、試合は一進一退となりやや膠着状態の中の4分、韮崎はロングスローからのこぼれ球を中盤で拾い、ワンタッチパスでゴール前に縦パスを通し、最後は④が決め貴重な勝ち越し点を挙げた。もう後がない本校は攻めに転じ、右サイドで大月がカットインしてシュートを打ち、こぼれ球が左に流れたところを粟生田が見事な2度に渡る切り返しで韮崎DFを翻弄、角度のないところからシュートを打つも惜しくも枠を捉えることが出来ず、そのまま終了の笛が鳴り3年生にとっての最後の大会は幕を下ろした。

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この試合、前述の通り韮崎にはリーグ戦前期は終了間際に逆転され、後期も大差で負けこの大一番がまさに雪辱を果たす最高のチャンスでもあった。その2試合の時期は、コロナ禍の厳しい規制が学校生活のみならず部活動にも及び、数多くの実戦で鍛えチーム力を向上させる機会が失われ、又、大学推薦関連テストで練習休止を余儀なくされ、チームコンディションとしては最悪の状態であり、その結果があまり参考にならいことが本日の試合では立派に証明された。本校のシュート数は、韮崎の半分(公式記録)であったが決定的に崩された場面はあまりなく、過去の対戦相手の厳しいプレスにボールを失う機会が多かった本校の中盤でのパス交換も、韮崎のそれに負けない個人技術の高さも目に付いた。得点経過を見ると、先制し追いつかれ逆転されたが、5分後すぐに追いついた精神力はチームの成長をはっきりと物語っている。今チームの戦績を辿れば、新人大会ベスト16、関東予選ベスト8(第5位)、インターハイ予選ベスト4(第3位)、そして今大会ベスト4(第3位)となり、何よりも“冬の選手権予選”に限って言えば、4年連続ベスト4(内優勝1回)の成績を収め、その実績で本校の新たなる『伝統』を着々と構築しつつある。また、先発メンバーに2年生5人が名を連ね、1、2年で100人を優に超す部員数は県下一を誇り、その選手層の厚さからみても次年度以降のチーム力はかなり向上するもの期待出来る。各大会予選の参加校は他より少ないが、‘絶対王者山梨学院’が君臨し、追随する上位チームも全国的にも強豪と言われ、その激戦区山梨の中でライバル校から“一歩抜け出す日”は近い。

先発メンバー(学年)⇒交代
GK ①永 田(2)
DF ②津 田(3)
DF ③星 野(2)
DF・主将 ④安 達(3)
DF ⑤柴 田(3)
MF ⑥橋 本(2)
MF ⑦佐々木(2)
MF ⑧神 田(3) ⑯高 橋
MF ⑩大 月(2)
FW ⑪平 田(3) ⑲久 保
FW ⑨粟生田(3)
リザーブメンバー
GK ⑰片 平(3)
DF ⑫菊 池(3)
DF ⑬山 本(3)
MF ⑭小 林(3)
MF ⑮川 村(3)
GK ⑯高 橋(2)
MF ⑱夏 目(1)
MF ⑲久 保(3)
FW ⑳中 屋(2)

 

筆者のプロフィール ≪日刊スポーツ山梨版(現在休刊)より抜粋≫
手塚秀昭(てづか・ひであき)
tezuka1950年、山梨県塩山市(現甲州市)生まれ。1972年、日本大学明誠高等学校に英語科教諭として赴任。75年、サッカー部監督に就任。全国選手権県大会準優勝(82、83年)、インターハイ県代表(83,84年、私学勢として初)、関東大会県代表(88年)、日大付属大会優勝など県下屈指の強豪に育て上げた。“心”を優先とした指導で、独自の戦術を駆使し、常に強豪校を脅かした智将。又、県東部地区の第3種(中学生年代)の普及のため、2001年に「リヴィエール」を創設し、05年、06年に関東クラブ選手権県大会優勝(同大会出場)、06年、高円宮杯県大会(U15)第3位に導くなど、第2種、3種の2つのカテゴリーでそれぞれ優勝(第3種はクラブ選手権)に導いた。それらの功績が称えられ、08年、県高体連より「指導者功労賞」、14年、県体育協会より「体育功労賞」がそれぞれ授与された。
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