お題:新渡戸稲造・芥川龍之介・内田百閒・夏目漱石・ラフカディオ・ハーン
作家の全集というものを初めて買ったのは、芥川龍之介だった。神田神保町の古本屋の店頭に積み上げられていた筑摩書房版。本巻8冊に加えて別巻の全9冊である。高校三年の夏休みは、この全集を読んで過ごした。翌年に控えた大学受験に失敗したときの言い訳にするためである。勿論、受験は全国模試の合否判定「E」が意味する通りの結果となった。それでも、書簡まで含めて芥川作品にひと通り目を通したあの頃の自分は、褒めてやりたいと思う。
芸術家の葛藤を鬼気迫る筆致で描く『地獄変』、怪異と幼心とを繊細な工芸品のように仕上げた小品『幻燈』(連作『少年』に収録)、あるいは黒澤明監督のモノクローム画面を想起させる『偸盗』。更には散々盛り上げといていきなり「未完」の『邪宗門』(笑)。今でも記憶に残っている作品は少なくない。もっとも、その後は読み返すこともなく、全集はいつしか本棚の後列に隠れてしまっていた。
その芥川の作品を、半世紀近くを経て思い起こすことになった。しかも、そのきっかけが新渡戸稲造になるとは思いもよらなかった。







