今回の球技大会、私は3年連続でバレーボールだった。毎回勝ったり負けたりと接戦で、その度笑顔だったり、涙したり。毎年それぞれの思い出がたくさんある。中でも今回の球技大会は、自分は高3なのだと自覚することができた良い機会となった。

球技大会前日の夜、私は2年前の球技大会を思い出していた。あの時はとにかくがむしゃらにボールに飛び込んでいった事とか、仲間と声を掛け合って励まし合っていた事など。あの頃はとにかく卒業してしまう先輩たちのために絶対負けられない、絶対勝ってやる、そんな気持ちでいっぱいだった。けれども今の私の気持ちは違った。後輩たちに楽しんでもらいたい、良い思い出を残してあげたい、後輩たちの為に負けられない、そんな素直な気持ちだった。

球技大会本番、前半は1対1の接戦で、延長戦に入った。点を取ったと思ったら取られたりとそんな試合を繰り返し、14対13と相手のマッチポイントにさしかかった時、サーブの順番が新入生にまわった。彼女の中できっと焦りや恐怖があったはずだ。結果サーブミスをしてしまい、この試合は負けとなってしまった。彼女は何度も何度も謝り、自分を責め泣いていた。私も悔しくて泣きたかった。しかし彼女を見た時、泣いてはいけない、私がしっかりして慰めないといけないと思った。

人は知らない間に成長すると聞いた事があるが、こういう事を言うのではないかと思う。先輩のために自分のためにと思っていた事が、後輩のためにと変わる。自分は高3なのだという実感がやっと湧いてきた。そんな球技大会だった。わたしはもっと高3という重みを背負っていけるだろうか。残りの2学期間で胸を張ってそう言えるようになりたい。

(高等部3年生 女子)

4月25日(土)球技大会当日、朝の天気は英国には似つかわしいどんよりした曇り空、さらには小雨がぱらついていました、しかし、今日の立教英国学院には似つかない天気です。起床した後、生徒は外の天気が気になっていたようですが、幸いにも、雨もあがり、予定通り実施することができました。

本校の球技大会は例年、入学式後2週間程で開催されます。新入生が新たに加わり、全校で行う最初の学校行事です。毎年優勝を目指し、熱い戦いが繰り広げられます。全校が赤と青の2チームに分かれて各種目に参加します。高校3年生手作りの赤色と青色のTシャツを身にまとうと、一気に雰囲気も高まります。またそのチームTシャツにメッセージを書き合うというのも生徒同士の間では伝統になっているようです。開会式で各チームの代表が選手宣誓を行うとともに球技大会は幕を開け、まずは、全体競技が2種目行われました。1種目目は青チームが、2種目目は赤チームが勝ち、両者譲らないまま、各種目の試合に移りました。

種目別の試合では、両チームとも、練習の成果を存分に発揮することができ、接戦が多く、見応えのある試合ばかりでした。試合の折々で、相手を尊重する精神、同じチームメイトに声援を送るなど、見ていて温かい気持ちになる場面が数多くあったことは喜ばしいことです。

夕食の後に閉会式が行われ、赤290点、青270点で、接戦を制した赤チームが優勝となりました。そして、各種目のMVPも発表されました。

この球技大会を通して、体を動かすことの楽しさやチームプレーの大切さだけでなく、先輩と後輩が同じチームになることで、立教生としての絆がさらに深まったようです。

At Millais school, I was surprised at the number of girls, facilities and automatic doors. Everything was vivid to me so sometimes I was confused. I felt less worried because when Millais girls came to Rikkyo, they would have felt similarly because we had not explained much as we felt it was normal. In Millais school, there were many opportunities and I felt that I had great experiences for my life.

At my partner’s house, her parents were enormously kind to me and they planned everything like sightseeing. So I was able to go to lots of places and have fun with my host family.

On the last day of my stay, my partner told me she wanted to visit Japan someday. I would like to return the favour so I said that I would guide her when she comes to Japan.

In order to learn and exchange knowledge about different cultures, we need to spend more time in the culture you want to explore.

桜も満開になり希望に満ちた春。とてもよく聞くフレーズである。私たちは今年から高校3年生となり、その象徴である高3の赤ネクタイをしっかりと着用している。新しい学年に新しい後輩。沢山の「新しい」を導いていかなければならないのが私たち高3生の役目である様に思う。
その役目の一つとして、新入生の案内というものがあった。文字通り新入生に校内の案内をする。多少の緊張もあったが「ついに自分たちがこの仕事をするのか。」という責任感も同時に抱いた。

話は少し変わり、日本では4月の上旬になんと雪が降った。東京の一部では、積雪量5センチを記録した地域もあったらしい。春に雪が降るなど驚きである。しかし、桜の上に積もった雪は本当に美しく時間を忘れてしまいそうになる程であった。ただでさえ弱い桜に雪などとんだ仕打ちである。そのせいで散った桜の多きこと。美しく胸打つものは、そう簡単に長くは続かないことを痛感した。

話を戻そう。私たち高3には受験という重荷がもれなく付いてくる。最高学年という責任も伴ってくるだろう。けれど、それとともに歩んで得られるものが本当に手にしたいと願う将来である様に思う。
雪に積もられた桜でも、雪が溶けた水を糧にしたのか、そのあとも強く咲いているものもあった。その桜は私たちを体現しているように見えた。今、桜のように咲いている私たちは、重荷でさえも糧とし、新芽という将来に向かい胸を張れるようしっかりとしなければいけない、そう心に強く思わせてくれた4月の上旬であった。

(高等部3年生 女子)

■2015年 日本での学校説明会・進学フェア

イギリスから担当教員が参ります。会場内に本校ブースを設け、個別相談に対応します。詳細は各ホームページでご確認ください。

3月29日(日)
10:00 – 16:00
中学高校進学相談会「よみうりGENKIフェスタ2015」 :
東京国際フォーラム 展示ホール1・2 (東京都千代田区丸の内3-5-1)
5月31日(日)
10:00 – 16:00
ベネッセ進学フェア : 東京国際フォーラム B2F 展示ホール1・2
(東京都千代田区丸の内3-5-1)
6月6日(土)・6月7日(日)
13:00 – 18:00
埼玉東部進学フェア : 草加アコスホール
7月18日(土)・19日(日)
10:00 – 17:00
彩の国進学フェア:さいたまスーパーアリーナ
7月25日(土)
10:00 – 16:00
JOBA学校フェア:ベルサール六本木
8月1日(土)・8月2日(日)
11:00 – 16:00
首都圏進学フェア千葉:幕張メッセ
7月20日(月・祝)
10:00 – 16:00
毎日新聞 進学博:大阪南 難波 御堂筋ホール
7月26日(日)
10:00 – 16:00
毎日新聞 進学博:大阪北 梅田 ヒルトンプラザ
8月8日(土)
11:00 – 16:00
毎日新聞 進学博:神戸 芦屋 ラポルテ

■2015年 海外での学校説明会

当該校の生徒・保護者以外で参加をご希望の方はイギリス本校までお問い合わせ下さい。

6月3日(水) ロンドン日本人学校
6月22日(月) ミュンヘン日本人学校
6月23日(火) ブラッセル日本人学校
6月26日(金) パリ日本人学校
9月22日(火) フランクフルト日本人学校
9月23日(水) デュッセルドルフ日本人学校

■2015年 海外子女教育振興財団主催 学校説明会・相談会

財団のホームページからの事前予約が必要です。イギリスから担当教員が参ります。会場内に本校ブースを設け、個別相談に対応します。詳細はこちらをご覧下さい

7月21日(火)
13:00 – 15:30
名古屋会場(ウインクあいち)
7月25日(土)
13:00 – 15:30
大阪会場(毎日新聞ビル〈大阪市北区〉)
7月31日(土)
13:00 – 16:00
東京会場(産業貿易センター)

2015年 立教英国学院学校説明会

予約は不要です。イギリスから担当教員が参ります。スライド・ビデオによる説明があります。説明会の後、個別相談も受け付けます。

■2013年8月に立教大学で開かれた本校学校説明会の様子はこちらからムービーでご覧いただけます。

8月21日(金)
14:00 – 15:45
大阪(梅田センタービル)
8月22日(土)
14:00 – 16:00
名古屋
8月23日(日)
14:00 – 16:00
東京(立教大学太刀川記念館多目的ホール)
10月24日(土)
10:00 – 12:00
名古屋
10月24日(土)
15:00 – 17:00
大阪(梅田センタービル)
10月25日(日)
14:00 – 16:00
東京(立教大学太刀川記念館多目的ホール)
12月12日(土)
14:00 – 16:00
東京(立教大学)

■大学合格状況

〈2003〜2013年度〉 〈2014年度〉卒業者数 43名
大 学 名       合格者数 大 学 名       合格者数
国公立 東京工業大学 4 国公立 一橋大学 1
国公立 東京外国語大学 4 国公立 東北大学 1
国公立 筑波大学(うち医学部1) 4 国公立 筑波大学 1
国公立 横浜国立大学 3 国公立 東京農工大学 1
国公立 一橋大学 2 国公立 横浜市立大学 1
国公立 埼玉大学 2 私立 立教大学 19
国公立 大阪府立大学 2 私立 上智大学 6
国公立 横浜市立大学 2 (1は医) 私立 慶応大学 5
国公立 東京大学 1 私立 法政大学 4
国公立 東京医科歯科大学(医学部) 1 私立 早稲田大学 3
国公立 山形大学(医学部) 1 私立 明治大学 3
国公立 東京海洋大学 1 私立 青山学院大学 3
国公立 国際教養大学 1 私立 千葉工業大学 3
国公立 首都大学東京 1 私立 津田塾大学 2
国公立 山口大学 1 私立 関西学院大学 2
国公立 広島市立大学 1 私立 中央大学 1
国公立 愛媛大学 1 私立 国際基督教大学 1
国公立 富山大学 1 私立 東京薬科大学 1
国公立 金沢大学(薬学部) 1 私立 明治薬科大学 1
国公立 北見工業大学 1 私立 聖心女子大学 1
防衛医科大学校 1 私立 フェリス女学院大学 1
私立 立教大学 139 私立 東海大学 1
私立 早稲田大学 53 私立 東邦大学 1
私立 慶應義塾大学 24 私立 桜美林大学 1
私立 青山学院大学 24 イギリス LIVERPOOL UNIVERSITY 1
私立 東京理科大学 20 イギリス SURREY UNIVERSITY 1
私立 明治大学 19 イギリス MANCHESTER UNIVERSITY 1
私立 上智大学 16 イギリス UNIVERSITY OF BIRMINGHAM 1
私立 中央大学 16 イギリス UNIVERSITY OF East Anglia 1
私立 日本大学 11 イギリス CITY UNIVERSITY LONDON 1
私立 成蹊大学 7 イギリス UNIVERSITY OF ST.ANDREWS 1
私立 法政大学 7 イギリス KING’S COLLEGE LONDON 1
私立 東京農業大学 7 アメリカ MASSACHUSSETTS LOWEL 1
私立 北里大学 6 その他
私立 南山大学 6
私立 明治学院大学 6
私立 学習院大学 5
私立 立命館大学 5
私立 東京薬科大学 5
私立 フェリス女学院大学 5
私立 関西大学 4
私立 関西学院大学 4
私立 立教女学院短期大学 4
私立 日本女子大学 4
私立 武蔵工業大学 4
私立 津田塾大学 3
私立 国際基督教大学 3
私立 成城大学 3
私立 東洋大学 3
私立 立命館アジア太平洋大学 2
私立 玉川大学 1
私立 獨協大学 1
私立 東京慈恵会医科大学 1
私立 日本医科大学 1
私立 日本歯科大学 1
私立 同志社大学 1
私立 聖心女子大学 1
私立 東京家政大学 1
私立 京都女子大学 1
私立 近畿大学(薬学部) 1
私立 聖隷クリストファー大学 1
私立 LEHIGH UNIVERSITY 1
その他

「こんにちは。鈴木です。宜しくお願いします。」
私は4年半前、緊張しながら、ヒースロー空港に到着して、高橋先生にそう言った記憶がある。あの頃は、すべてが新しくて、怖い事、知らない事、不安な事が心の中にいっぱいあった反面、新しい世界に対しての期待、良い緊張感によって胸が躍っていた。それが立教英国学院という学校に通い始めた私だった。

それから、私の学年は7人から40人以上まで増え、自分も成長し、知らぬ間に高2になって、イベント、部活、委員会の中心に立つようになり、皆に時間を知らせたり朝起こす仕事まで任された。何よりも、気付けば私は多くの先輩を見送り、先輩だらけだった学校が今では同学年と後輩しかいなくなり、次に卒業するのは私たちだ。

長かったと言えば長かったが、一瞬だったと言えば一瞬でもあった。私はついに高3になろうとしている。そして、永遠に続くような気がしていた立教生活も残り2学期。そう思うと妙な気持ちに襲われる。大学を楽しみにしている自分、日本に行って先輩に会えると思うと嬉しくてたまらない自分、受験を失敗するのが怖くて隠れて震えている自分、文句を言いながらも第2の家と家族みたいな立教にそろそろ別れが近づいて来ている事を悲しんでいる自分。

このような気持ちを心に刻んで、私はついにラストスパートを迎えようとしている。悔いのないように、最後まで笑顔で過ごしたい。そして、3学期大学合格を無事伝えられるように全力で頑張りたいと思う。

(高等部3年生 女子)

この春休み。今回は何かが違う。僕は今高等部2年生、いや、3年生になろうとしている。つまり、受験生に向けてのスタートラインに立たされている。

他の学年が春休みに入った頃、僕たち受験生は「遊び」ではなく、「学習」の1週間に突入した。僕は理系なので補習授業をフルで受けさせてもらった。そして、授業が入っていないコマは自習。学期末に定期テストがあったばかりで、長時間の自習には既に慣れていたので難なく集中できた。

補習が終了し、他学年より1週間遅れをとって突入した春休み。久々の、丁度2年ぶりの日本へ本帰国して心浮かれてしまった。学校にいる間は「よし!家に帰っても、この勢いで勉強するぞ!」とやる気満々だったが、家に帰ると、どうしても勉強する気力が湧かない。学校にいる間は、周りに一生懸命勉強している友達、いわば競争相手がいた。家には…。周りに競争相手が誰一人いない。そんな中で学習に取り掛かるにはとても時間がかかった。

休みに入って、1、2週間した頃のある日。僕は家族と一緒に立教大学、そして早稲田大学に行き、下見をしてきた。その日は丁度どちらの大学も卒業式の日で、校内は学生で溢れていた。僕の中で印象に強く残っているのは、立教大学の校風だ。煉瓦造りの校舎、そして手入れのされた芝生。いつか自分もこんな場所で勉強ができたらなと、思った。それから、僕は少し勉強をする気力が増し、今までのだらけた日々とは絶交した。

このように、僕は少し遅かったが、受験生と自覚できるようになったのだ。休み明け、勝負だ!一度きりの人生なので悔いの残らないよう努力を積み重ねていきたい。

(高等部3年生 男子)

春休みにスカイツリーに行った。スカイツリーは日本一高い電波塔で、その高さはなんと634メートルもある。私は今まで東京に住んでいながら、そこを訪れたのは初めてだった。スカイツリーの完成からまだ数年しか経っていないが、そこは東京で一位、二位を争う観光地になっていたと感じる。展望台のチケットを買う行列は予想していたよりもはるかに長く、待ち時間は1時間ほどだった。

チケットを買い、いよいよ展望台へ向かった。展望台まではモダンなエレベーターに乗った。これが振動もなく数十秒で上まで着いてしまうのが驚きだ。展望台に着くと、そこには今までに見たことがない景色が広がっていた。車や人は蟻のように動き、東京の町はビルや住宅、工場でびっしりと埋まり、少しの隙間も許さないという、ゆとりがなく忙しい雰囲気が漂っていた。しかし、空を見ると、空は澄み渡り、どこまでも広がっていた。私はそれを見た時なんだかほっとした。

東京は時代を経て様々な形にせわしなく変化してきた。大火事や大空襲などで町が焼け野原になっても東京の町は幾度も再生を繰り返した。また時代に応じて人やモノも変化してきた。車、ファッション、電子機器はここ数十年で急速に発達し、人々に暮らしの豊かさをもたらした。そんな東京で唯一、変化していないのが空であると感じる。空だけが私たちの心のゆとりを許してくれている。そんな気がするのだ。しかし、近年は工場の煙や車の排気ガスで大気汚染が発生しているそうだ。

東京の澄んだ空が見られなくなったその時、私たちの心にはゆとりなどあるのだろうか。

(高等部3年生 女子)

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。そして在校生諸君、進学おめでとう。
今日はちょうど桜が満開で、日本の春を代表する桜と、イギリスの春を代表するダフォディル、黄色い水仙のことですが、その両方が咲いているという、いかにも立教の入学式にふさわしい日となりました。

この学校は1972年、初代校長をつとめた縣康(あがたやすし)先生によって創設されました。世界で最初に海外にできた私立の全寮制日本人学校です。
このあと新入生の皆さんにお渡しする胸のバッジには、この1972の数字が記されています。今年は2015年、この4月で創立43年を迎えました。

今から43年前というと、日本がまだバブルの時代を迎えるはるか前、日本人が海外に出て活躍を始めたばかり、そういう時代に、創設者の縣先生の言葉によれば、「これからの日本の若い人達に、真の国際的教養を身につけさせたい、日英の親善のために何かしたい」という目的でこの学校が創られました。今、日本では教育のグローバル化が叫ばれ、国際的に活躍できる人材の育成とか、世界の人たちと共に生きる力をつける、などといったことがあちこちの学校で教育目標として掲げられています。すべて立教では43年前から当たり前にやってきたことです。今年度からはUCLロンドン大学との提携を踏まえて、イギリスの大学への進学も視野に入れた、Critical Thinking などの授業も始まります。

創立当時、わずか19名の小学生でスタートしたときの学校は、今、本館と呼んでいる古いお屋敷だけ、この本館の中で全員が暮らし、食事をし、授業もしていました。第4代校長の宇宿昌洋先生の時代に、在英の各企業をはじめとする多くの方々のご支援を得て、食堂ホールや教室棟、体育館や図書館などが完成し、今ある学校の形ができあがりました。
昨年には男子寮3階の改築工事が無事終了し、現在建設中の新しい女子寮も、もうあとほんの少しで完成します。女子の皆さんはしばらくの間、窮屈な寮で我慢しなければなりませんが、ハーフタームからは快適な生活を送れるはずです。今回の寮の建設にあたっても、多くの方々から沢山のご支援を賜りました。この場を借りて有難くお礼を申し上げます。特に今回、初めて君たちの先輩たち、卒業生の皆様からも多くのご協力をいただきました。生徒諸君は是非このことを心に留めて、この学校がたくさんの先輩たちによって支えられていることを覚えておいてください。

実は新しい女子寮は先月完成の予定で、この4月から使用を開始するはずでした。工事が遅れたのはコウモリのせいです。昨年まで倉庫として使っていた旧いガーデンハウスを取り壊すにあたって、事前調査でコウモリの糞が屋根裏から見つかりました。イギリスではコウモリは保護動物である、ということで、建築の認可を受けるにあたっては、コウモリの保護を最優先させることが義務付けられました。そのため取り壊しの際には、工作機械を使って一気に壊すのではなく、動物保護団体のコウモリ専門家の立会いのもとで、屋根の瓦を一枚ずつ手作業ではがし、もし瓦と瓦の間でコウモリが冬眠していたら、直ちに工事は中止、冬眠中のコウモリが自然に目を覚ますまでそっとしておかなければならない、という厳しい条件付の工事となりました。幸いにして、冬眠中のコウモリは発見されず、以後、工事は順調に進みましたが、その時の遅れが最後まで響いて竣工が遅れることになりました。今、既に外観は完成していますが、こちら側から見上げると屋根の上の方に2箇所の穴が開いているのが見えると思います。何とあれはコウモリ専用の出入り口です。屋根裏の一部を完全に仕切って、コウモリ専用のスペースが作られています。新しい寮には、これからコウモリの新入生も加わることになるかもしれません。

コウモリとの共同生活、なんてことを考えていて、ミトコンドリアの共生の話を思い出しました。ちょっと脱線しますが、3年前、日本で立教大学理学部の講義室を借りて学校説明会を開いたことがあります。その時に理学部の建物の入口に、当時立教大学教授の黒岩常祥(つねよし)先生のミトコンドリアについての講演会のポスターが貼ってありました。講演会当日はイギリスにいて参加できなかったのですが、ちょうどバイオロジーの授業でミトコンドリアが出てきたところだったので、ちょっと気になって、この先生の書いた本をアマゾンで捜して買いました。これがものすごく面白かった。何しろこの本をミセス今多に貸したら2年間戻ってこなかったぐらいです。何の話かというと、ミトコンドリアは細胞のパーツの一つです。私たちの体を作っている細胞の中に入っている。ミトコンドリアの役割は、食物を酸素を使って分解してエネルギーを取り出すこと、このお陰で私たちは生きている。ところが、なんとこの本によると、ミトコンドリアはもともとバクテリアだったというのです。

バイオロジーの授業で、食物は、酸素を使って分解したほうが、酸素なしで分解するよりずっと効率よくエネルギーを取り出せる、と習います。さて、昔々、20億年前の地球にはバクテリアしか住んでいなかった。酸素を使えるバクテリアと酸素を使えないバクテリアが住んでいたのですが、20億年前のあるときに、この2人が共同生活を始めた。酸素を使えるバクテリアが、酸素を使えないバクテリアの中に入って、一緒に暮らすことにした。それがミトコンドリアだというのです。そうやって酸素を使えるバクテリアの方はミトコンドリアになって体の中でエネルギーを取り出す仕事を専門にやる。酸素を使えなかったバクテリアは、食物さがしに専念できる。この結果、それまでバクテリアしかいなかったこの地球上で、生物の大進化が始まった。

脱線ついでにいうと、ここまでが動物の話。実はもうひとつ別の種類の、光合成をできるバクテリアというのもいて、これも一緒に共同生活を始めたのが植物だそうです。このバクテリアは植物の体の中で葉緑体になった。これを細胞内共生説というそうです。面白いでしょ。私が高校生の頃にはミトコンドリアも葉緑体もただの細胞のパーツでした。最近の研究では、ミトコンドリアも葉緑体も、ちゃんと自分のDNAを持っていて、細胞の中で自己分裂して増殖しているらしい。さすがもとバクテリアです。そしてすごいところは、君たち風邪をひいて熱が出て、体が風邪菌と戦わなきゃならない、そういうときには、エネルギーがたくさん必要だから、細胞の中でミトコンドリアが一生懸命増殖する。ちゃんと助け合っているのです。つくづくヒトの体ってすごいなあと思います。

さて、今日から君たちの立教での生活がスタートします。朝7時の起床から夜寝るまで、皆で生活を共にして、一日3度の食事を共にして、泣いたり笑ったり歌を歌ったり、助け合ったり喧嘩したり、そうして何か学校行事があれば皆で力を合わせて取り組んでいく、球技大会、ジャパニーズ・イブニング、スクールコンサート、オープンデイ、合唱コンクール、様々な行事やイベントを通して、勉強だけでなく、スポーツが得意な人、絵がうまい人、歌や楽器が上手な人、模型作りがうまい人、人の話を聞いてくれる人、一緒に泣いてくれる人、黙って手伝ってくれる人、一緒に生活しているからこそ、他人の良いところ、他者の存在の有り難味が分かる、互いを認め合うことができる、それが立教の良さだと思います。そしてそれこそが、これからの国際社会の中で、環境も考え方も異なる色々な国の人たちと、共に生きていく、そのための第一歩につながっていく、と思っています。

本校の教育理念として、「キリスト教に基づき他者を思いやることのできる人間を育成する」ということを掲げています。
他者への思いやりの心は、43年という歴史の中で、君たちの先輩たち、生徒一人一人、教員一人一人が、力を合わせて実現してきたことです。先輩から優しくしてもらった、あのとき上級生が面倒を見てくれた、だから自分が上級生になったら今度は自分が下級生に優しくしてあげる、後輩の面倒を見てあげる、この良い連鎖を断ち切らず、守り続けていってください。

高等部3年生の赤ネクタイは、最上級生としての責任の証です。今日は早速、受付や案内係で大活躍してくれました。今年はどんな高3になるのか、後輩たちにどんな背中を見せてくれるのか、楽しみにしています。高校2年生はこれから学校の中心になります。生徒会、委員会、部活動、係本部、これからの1年間、どうしたら皆がいきいきと楽しく生活していけるか、それを考えていくのが君たちの責任です。そして下級生は、先輩が優しいからといってそれに甘えすぎないように。ちゃんと礼儀を守る、けじめをつける、言葉遣いに気をつける、そういうことがきちんとできなければいけない。それができる下級生の上に、優しい上級生という存在が成り立っていくのです。

昨年、高校3年生を送る会の最後に、立教を去っていく高校3年生を代表して山本さんが君たちに贈った言葉を覚えているでしょうか。
「私たちは、みんなを立教に残していくのではない、立教をみんなに残していきます。」
「みんなを立教に残していくのではない、立教をみんなに残していきます。」

ここにいる君たち一人ひとりが、これからの立教を作っていく。
友達のために何をしてあげられるか、先輩のため、後輩のため、一緒に生活している人のために自分は何ができるのか、いつもそういうことを考えながら、これからの生活を送っていってほしいと思います。
君たちの成長を祈って、本日の入学・始業礼拝式の式辞といたします。

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