華麗なバグパイプのファンファーレで幕を開けたスクールコンサート。ピアノ、サックス、ギターにハープなど様々な音色や歌声が織り成すステージは、生徒や教員は勿論、お迎えした150名のお客様の喝采を博すものとなった。
殊にバイオリンソロの演奏は圧巻だった。繊細さと大胆さをなめらかに御した一心不乱のその旋律は、まさに胸に響く素晴らしさ。演奏が終わるや否や会場はスタンディングオベーションに包まれ、圧倒された立教生からは感嘆の声が一頻り。先輩、後輩、同級生が次々と出演する中、友人の新たな一面を知る絶好の機会になったに違いない。
音楽が心に迫るものであることは、誰もが経験する事実だろう。楽器と向き合い、楽曲と向き合い、演奏する自分自身と向き合い、よりよいパフォーマンスを求めてきた過程がその音に滲むのは勿論である。加えて、生徒の演奏には特に多くの人の思いが伴うように感じる。

 

 

レッスンの途中で生徒の様子が普段と違うと、何かあったのかと保健室へ確認にくる音楽の先生は多い。自分の指導が厳しすぎたのか、何か他のことで悩んでいるのか、一通り熱心に話した後、「あの子は本当に素敵な演奏をする」「あの子はとてもいい声で歌う」と目を輝かせて嬉しそうに語っていく。演奏の質だけでなく、そのように生徒の内面に注目し、彼らの可能性を信じる先生に導かれることの幸運を思う。
また忘れてはならないのがご両親の支えだろう。懸命に自分の世界を表現する生徒の姿は、それを支える家族の理解と応援、信頼なしには存在しない。それは当然のようでいて、何と貴重な恵みなのだろう。そのことに今は必ずしも気付かずに、逞しく成長してしまう若々しさもまた、見ていて晴れ晴れするものであった。
普段関わっている生徒一人ひとりが特別な存在なのだと改めて感じたひととき。来学期は、どんな音を聴かせてくれるだろうか。

 

このチャリティーコンサートでお客様より集まった866ポンド47ペンス(約11万円)に、今学期の日曜礼拝で集めた献金1000ポンドを加えて、1866ポンド47ペンスを英国日本婦人会を通じてSave the Children Japanに寄付いたします。

                             

立教英国学院では、地元の教会の日曜礼拝に出席しています。各クラスが交替で1学期に1回程度、外出の機会を持ちます。英国はどの町・村も教会を中心に成り立っており、近くのクランレー村を訪れると、教会からまっすぐに伸びるHIGH STREETという通りを中心に、店舗と住宅が広がり、人々の居住区が形成されている様子が実感できます。


キリスト教といっても様々な宗派がありますが、英国では、本校もその流れを汲む16世紀に成立した英国国教会が主流となっています。かの有名なヘンリー8世が興したものです。立教の校内で行う礼拝はスタンダードな礼拝ですが、地域の礼拝に参加すると、様々な礼拝が行われていることが分かります。


期末考査の合間の7月3日(日)、H2が訪れたラジウィック教会は、小高い丘の上に建つこぢんまりとしたかわいらしい教会です。数年前に改修されてきれいになり、古くからの雰囲気がほど良く調和した石造りの建物。周りには古い墓石や、すでに朽ちてむき出しになった棺が風雨にさらされ、それを緑の芝生が覆いつくした様はなんともいえない静かな趣が漂います。


この日はALL AGE SERVICE、つまり子供から大人までのすべての人々のための礼拝の日でしたが、この日はさらに、子供たちが主宰する礼拝となりました。
はじめの挨拶が終わると、子供の司会にバトンタッチ。聖書を読むのも子供たち。集まった人々への語り掛けも、大人顔負けのプレゼン力が感じられました。お話も、集まった方々から何人かを呼び、パフォーマンスや質問形式で人々を楽しませ、しかし何かを伝え感じさせてくれます。聖歌をうたって献金を集める当番には、立教生2名も参加しました。礼拝の終わりには、2階部分から紙飛行機が舞い降りて、受け取った人が中を開いて、一人一人が祈りの言葉を捧げました。思い返してみると、このラジウィック教会に新しい牧師様がいらっしゃってちょうど1年の日でした。


「次は何だろう?」-楽しみにしながらのあっという間の礼拝の時間。終わって教会を後にすると、1時間が経っていました。「今日の礼拝は面白かった!」と立教生たちも楽しんで帰って来ましたが、掃除の時間に間に合わず、H2だけ、夜の時間に教室掃除をすることになりました。

                                         

「瞬間」

選手が芝を踏みしめた。

ほんの数秒前の空気が消滅させられたかのような、静かな、それでも闘志に満ちた気迫が、その場一体に広がる。

白い服がなおさら静寂を強調しているようだった。
大きく息を吸い込み、吐き出し、黄色いボールを力強く握った。1回毎に全ての運命を注ぎ込むように、力強く握った。
選手が、その腕を大きく、そしてゆっくり振り上げた。

実際にゆっくり振り上げたのではない。張りつめた空気が私達にそう見せていただけであった。
振り上げた腕から、たった1球のボールが宙に浮いた。

そのボールが上昇し、下降するまで1秒もない。

しかし、長い。とてつもなく長いのだ。

その一瞬は選手に何を与えているのだろうか。

無心になるための時間、今までの努力を振り返る時間、闘争心を力に変える時間、きっと一人一人の選手が、一人一人別のことに時間を割くのだろう。
そのボールは、0.何秒後、振り下ろした腕に握られたラケットによって打ち出された。

今までの静寂の空気を全て打ち破り、勝ちたい、というただ一つの最終目標を叶えるべく、凄い速さで空を切った。
その光景とともに選手の声も聞こえてきた。

それはまるで緊張という感覚を捨て、今の全てをこの10数秒間に捧げるような、そんな試合を始める掛け声のように聞こえていた。
(高等部3年生 男子)

                 

その果実の名は

テニスに興味のない私にとってウィンブルドンはさして面白味のない行事だった。行きのバスの中でも、入場の列に並んでいる間も、久々の外出をうれしいと思う反面で、「これから、一日中テニス漬けかぁ」というアンニュイな気持ちが消えなかった。しかし、入場後すぐにふらりと立ち寄った出店で出会ったあるものが私の一日を変えた。

そもそも、私がその店に寄ったのは、一時的な空腹を紛らわせるのに適当な店がそこしかなかったからで、その店で売られているものの味には大した期待を抱いていなかった。「どうせ屋台の商品だし、まぁお腹にたまれば何でもいいや。」そんな軽い気持ちで私はそれを口に含んだ。その瞬間、私の心に一陣の風が吹いた。口の中は、さわやかな酸味と芳潤なかおりに満たされ、私 は一瞬自分がウィンブルドンにいる事を忘れた。私はただ恍惚としてその味に酔いしれた。その感覚はさながら、丘の上でさわやかな初夏の風に吹かれた時の様な、新鮮ですがすがしいものだった。そして、私は、 あたかも、寝起きに明るい朝日を浴びた様なさっぱりとした気分になった。それまで私の心に渦巻いていた「眠い・疲れた・退屈」というじめじめした感覚は消え去り、代わりに「楽しい1日になりそうだ」という素敵な感覚が心に芽生えた。そして、その予感通り、私の1日は最良のものとなった。

私の1日を変えた、宝石の様な輝きを放つその神の果実の名前 ……………いちご。


(高等部3年生 女子)

                                                   

第4回の英語校外学習は6月16日。でも出発間際にかなりの雨になったので、結局次週へ延期することになりました。そこでこの日は中1、中2が全員教室に集まって予習。今回のミッションは、「お店の名前探し」。第1回校外学習で調べたところではクランレーにはお店が大小合わせて100軒以上あったのですが、今回はその中から先生が33軒のお店を選び、そのお店の種類や特徴を書いたワークシートを用意しました。そのお店を探し出して店名をワークシートに書き込んでいくというミッション。「英語を使わなくてもできちゃいませんか?」と生徒たち。「そうかな?制限時間は前回と同じ20分。1軒1軒探していたら大変です。一番いいのは道行く人に聞いてみることですよ!」と先生。

ということで、雨でつぶれた1時間は、みんなでお店探しの為の英単語をチェック。「宝石屋」「不動産屋」「合鍵を作る店」「服を探しながらコーヒーショップでひと休みできるお店」「もうすぐ店じまいしそうな時計屋」「ウェディングドレスが飾ってあるクリーニング屋」…etc. 先生の用意したワークシートはなかなか手強そう。皆で辞書を調べたり、知恵を出し合って白板に使えそうな英語をどんどん書いていきました。気がつくと外は雨上がりのきれいな空。「なんだ、これなら行けたのに~」「でも、この白板の英語が無かったら大変だったかも知れませんよ。来週は今学期最後の校外学習です。晴れるといいですね。」

翌週6月23日はまずまずの天気でした。ミニバスを降りるとその場で班分け。3人1組でワークシートを持って町に繰り出しました。早速通りがかりの人を捉まえてお店の場所を聞いているグループ。白髪の優しそうなおじいさんに随分長い間聞いていたので、かなりの数のお店をチェックできたかも もうひとつのグループも通りがかりのおばさんに質問。中1、中2の生徒にしてはなかなか積極的。前回のインタビューで度胸がついたのかも知れません。時間は刻々と過ぎていきますが、「絶対に走っては行けません!」「ワークシートは歩きながら書かないこと。車には十分注意して!」と念を押されているので、うまく効率的にまわらなければなりません。20分後、皆それなりの収穫を得た満足げな顔でカーパークに集合しました。「あと20分あれば全部できたのにー。」「集合時間に遅れた班は減点ですよね!」「うちの班はこの町でホームステイしてた人がいたから完璧!」 いつのまにか「英語を使う」ことを意識せずに「町を歩いて英語で調べる」ことを覚えてくれたかな、と英語校外学習の成果を評価してみたりもしました。

文法とかボキャブラリーも勿論大切ですが、本当に使える英語を学ぶには「手段としての英語」を目的をもって使っていくことが重要ではないか、そこから始まったこの「英語校外学習」。その成果はこれから彼らがどれだけ意欲をもって英語学習へ取り組んでいってくれるかにかかっていると言えそうです。

                                    

                          

6年の英国駐在を終えて帰国することになり、最後のご挨拶に上がりま した。

毎年OPEN DAYにお邪魔して先生方とも懐かしい話をさせて 頂きましたが、これからは同窓会にてまたお目にかかれることを楽しみ にしております。

また機会があれば遊びに来たいと思います。

今後とも母校の一段の発展を祈念し、とりあえずのご挨拶とさせて頂き ます。

                   

5月下旬、中学1、2年生は今学期3回目の校外学習でクランレーに外出。第1回、2回で町の様子を大体把握したところで、今回は、「町の人にどんどん話しかけてみる。」がテーマ。まだ英語を習い始めて間もない生徒がほとんどでしたが、既に校内で働くイギリス人スタッフと話したり、何度かの外出でイギリスの様子も知る事ができているので、準備は万端。授業で習った疑問文をしっかり頭に叩き込み、話しかける時やお礼を言う時のセリフも練習して、いよいよ出発。簡単な英語ですが、実際にそれを使うと思うと、気持ちはウキウキ、ドキドキでした。

学校のミニバスがカーパークに到着すると、2人ずつのペアに分かれてそれぞれの場所に移動します。今回のインタビューは、行き交う人たちが住んでいる場所の調査が目的。「イギリスで一番大きな村」と地元の人々が自負するクランレーは、今や大手スーパーを始め有名チェーン店が並ぶ立派な町。「地元の人以外でここに来る人たちは一体どれくらいいるんだろう?」という疑問の答を出すべく、早速インタビューを始めました。

「今回は100人の人にインタビューするのを目標にしましょう。それだけ聞けばかなり確かなデータが得られますからね。制限時間は20分。誰に聞こうかなんて迷っている暇はありませんよ。すれ違う人たちにどんどん話しかけていって下さいね。」と言われたものの、その目標を達成する為にはそれぞれのペアが10人近くの人たちにインタビューをしなくてはなりませんしかも20分で!!

ベビーカーを押しながらスーパーの袋を沢山抱えて歩く女性に話しかけたら、「ごめなんさい、でもわかるでしょ、ほらね。」と断られ、ビジネスマン風の男性に声を掛けたら、スタスタと歩き去られてしまい でも、年配の方に話しかけると笑顔で丁寧に答えてくれたので、ちょっと勇気が出ました。町のあちこちで、制服を着たかわいい立教生がイギリス人に話しかける姿はなかなか頼もしいものでした。

集合時間になって待合せのカーパークに戻ってきた生徒たちが口々に今日の感想。「何人も逃げられちゃったー。」「お年寄りの人は優しく聞いてくれる人が多いよ!」「立教の生徒?って聞かれた。みんな、学校のこと結構知っているんですね。」「立教生だって言ったら親切に聞いてくれたよ。」

全部で97人の人にインタビューする事ができた調査結果も興味深いものになりました。地元の人は半分の51人。近くの村から来ている人がその次に多く、少し離れたもっと大きな町から来ている人、そしてロンドンから来ている人たちも何人かいました。一番驚いたのは、「バリ島」と答えたペア。「???」困っていたら「インドネシアのバリ島だよ。」「エエーッ!!」

「どうしてこんな町にいるんですか?」「イギリスの町、どう思いますか?」「日本のこと知っていますか?」
もっと色々聞けたらいいのに。英語学習意欲がまた少し刺激されたのではないでしょうか。

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