思うに、私の社会人としてのスタートは三十数年前に遡るが、まさに高度成長時代のまっただ中には時代の寵児とも持てはやされた銀行員であった。銀行員としての生活は猛烈社員そのものであったが、銀行という立場で様々な企業への融資等、巨額の金を動かし、日本の経済を担っているという自負を持ち、やりがいもあると言うことで、若い頃の無我夢中の楽しい時代でもあった。

教育の世界へ身を投じたのは、ちょうどバブル崩壊の頃、銀行マンとして窮地に陥っていた折も折、知人からある中高一貫校への誘いがあり、渡りに舟の勢いでひき受けてしまったのが教育の世界であった。もともと、大学時代から教育には興味関心があったということも、決断を促した要因ではある。しかしながら、実際に教育界に飛び込んでみると、教育の役割の大きさ、難しさに直面し、日夜、研鑽に励み、苦しいことの連続であった。大変な世界に飛び込んでしまったということを実感したものである。そういう中、生徒と日々ふれあい、成長していく姿に喜びを感じながら、いつしかのめり込み、気がついたら、さとえ学園小学校に異動していたというのが現実である。考えてみたら、実に多くの生徒とのふれあいがあり、楽しみながら経験を重ねてきたものである。

この4月、校長を拝命し、早くも4ヶ月が過ぎようとしているが、子どもたちがそれぞれ個性を発揮しながら、様々な面で成長していくことを日々実感している。校長としての喜びを感じつつ、私学特有の「建学の精神」に則った教育を充実させることの責任感をも強く意識する日々でもある。

最近、嬉しいできごとがあった。

それは七夕飾りの短冊の中に、2年生の女の子が書いた「ぜつめつきぐしゅをすくえるひとになりたいです」という文字を見つけたことである。思わず、「やった」と心の中で叫んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本校では、毎週木曜日に全校朝礼があり、10分ほどの「校長講話」をしている。

 校長として1年生から6年生まで大きな発達段階の差がある子どもたちに向けて話すのは大変なことである。今学期は、「偉人の言葉」、「環境問題」、「今話題のできごと」という3つのカテゴリーで、今、一番伝えたいことをとりあげてきた。

最近、「絶滅危惧種」の動物のことやそれに取り組む人々の活動、そして私たちが、今できること、私がWWFという保護活動団体の会員となったこともとりあげながら話をした。

少し、難しいかなと思いながら、絶滅危惧種として子どもたちの大好きなパンダとスマトラ虎の話を2週に渡って話をしたのだが、ひらがなでしっかりと几帳面な文字で書かれた短冊・・・僅か8才の子どもの心に届いていた。これは、子どもの心に「成長の種」として宿ったことの証だ。・・・・私は心から感動した。2年生の女子の書いてくれた短冊が私を励ましてくれた。(写真参照)

これからも、このような「成長の種」が大きく育って、大輪の華を咲かせてくれることを祈りつつ、私は子どもたちの心に人間として大切なことを語り続けて行きたい。

 

 

さとえ学園小学校

校長

下平 孝富

ページ
TOP