雄鳥のごとく(3)

 

雄鳥のような男が身近にいた。

私の父である。

小学校一年生のある日、私が
下校すると、家の周りに荒縄が
張り巡らされている。

二戸建ての借家だったのだが、
中に入ると、姉と隣のおばさんが
抱き合って泣いている。

母の いない私にとって、姉は母
代わりであった。

近所の、たちの良くないおじさんが、
家主との権利関係のもつれから、
店子である我々二軒の家の周りに
縄を張り、「出入り禁止」を申しつけた
のである。

幼いとは言え、私は長男意識が
強かったから、責任感がぐっと
こみ上げてきた。

だが幼児の身にはどうすることも
できない。

隣のおじさん、菅野さんと言ったが、
が帰ってきた。おじさんは鍛冶屋で
ある。

腕は足ほどにも太い。おばさんと
姉は、菅野さんのおじさんに取り
すがり、泣きながら訴えた。

息詰まる一瞬であった。その場の
雰囲気に、ある種のなまめかしさを
感じたのだから、私 もませていたの
かも知れない。

 

その4につづく…

ページ
TOP