暗記の大切さ (11)
11 歳と言えば今で言う小学校の四年生
である。
当時武士階級の知的水準は高かったから、
彼らを感銘させた松陰の天才は驚くべきもの
だったと言えよう。
松陰の天賦の才、刻苦勉励はもとよりのことで
あるが、それにしても何が幼い彼を、これほどの
天才に育て上げたのであろうか。
松陰に限らず、当時の教育は素読と手習いを
中心とするものであった。素読とは「文章の意義
の理解はさておいて、先ず文字だけを声を立てて
読むこと」である。(広辞苑)
江戸時代の、論語その他漢籍の学習は大部分
この方法によるものであった。教師の範読に従 い、
生徒は、その口まねをするように音読を行うのである。
斉読だから、今で言うコーラ スリーディングである。
このような、意味内容も分からぬまま教師の口まねを
するような教育は、現代の学校教育においては、
ともすれば白い目で見られがちである 「子どもは教育
の主体であって客体ではないのだから、常にその意味
内容を考えながら学ぶのでなければならない」とする
思想が、今日支配的だからである。
その12につづく…