暗記の大切さ (13)
アメリカとの戦争に敗れ、いわゆる
新教育が続いた、この六十年間、
知識は創造性を阻むものであるか
のごとく、敵視されがちであった。
そのようにして、知識もないが、
思考力も独自性も創造力もない
世代が育ってしまったのである。
天才松陰は、その後19歳で、
玉木文之進らの後見人を離れ、
藩校・明倫館の独立師範 (兵学
教授)に就任する。
素読で育った彼には、既に確乎
たる哲学が確立されていた。素読
の力、また必要な知識を暗記する
ほど習熟することが、どれほど大切
であるかが痛感さ れるのである。
「新教育」においては、音読そのも
のも軽視されがちであった。小学校
の廊下を歩いていても どこからも
音読の声が聞こえてこない学校全体
が不気味に静まりかえっている。
私の小学校時代には、国語では、
今とは比べものにならないくらい
音読が重視された。
授業の三分の一は朗読、音読に
費やされていたのではないだろうか。
だから今でも、小学校六年生の国語
の教科書のほぼ全部を記憶している。
いつでも直ちにすらすらと全文を暗唱
することができる。
その14につづく…