昔の子供 今の子供(1)

私が英語の代用教員として北海道の
中学校に勤務していた頃である。

ケンマというあだ名の一年生がいた。

勉強は苦手だが、すこぶる生活力が
ある。魅力的な生徒なのだが、授業は
ほとんど聞いていない。

話は聞かなくとも良いが、 せめて聞いて
いるふりくらいはしてもらわねば、私も立場上
困る。

そのケンマが、どうも私の存在など忘れて
しまったかのように、机の陰で何やらごそごそ
やっている。

どうも玩具か何かを持っているらしい。

「ケンマ、 お前そこで何をやっているんだ。」

私は一喝した。

ケンマは「玩具」をさっと 机の中に隠した。
「出しなさい」怒り心頭に発した私は、ケンマの
傍に近づい た。

しばらくもぞもぞしていた彼は、遂に諦めた
のか「玩具」を机の上に置い た。

瞬間私は後ろに飛び下がった。

机の上に置かれた「玩具」は蛇だったので
ある。

私の蛇嫌いは年季が入っている。その蛇、
青大将が机の上で動いている のだから、
たまったものではない。

「先生、ケンマはほかにも何匹も持って
い るんだよ。」

他の生徒が教えてくれた。

怖々全部を机上に出させたが、ケンマ は
合計三匹の蛇を「所有」していたのである。

 

その2につづく…

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