愚直に生きよ(1)
校長 小川義男
小学校教師をしていた頃、クラスに
毎日のように遅刻してくる生徒が
おりました。
理由を尋ねると、「寝坊をした」と
言うのです。いくら注意しても改まらない
ので、ある日私は、それはもう徹底的に
厳しく叱りました。
翌日、さすがに今日は定刻に来てくれる
だろうと思って待ってい ると、何とその日も
彼は遅刻してきました。
怒り心頭に発した私が、「今日はどうして
遅れた。」 と怒鳴りますと、何とまたしても
彼は、「寝坊しました。」と言うのです。
成績の良い子ですか ら、嘘を言う知恵が
ないはずはありません。しかし彼は、愚直
にも「寝坊しました。」を繰り返すのです。
彼が再び厳しく叱られたことは言うまでも
ありません。しかし私の心には、怒りとは
別に、彼に対する全幅の信頼が芽生えて
きました。
「お母さんが風邪を引いて熱を出したので、
看病していました。」などと、巧みに嘘を操る
小学生がいないわけではないのですが、彼
のこの愚直さ、不器用さが、我々の間の
信頼関係を確立させたのです。
その2につづく…