進路指導の難しさと大切さ
進路選択は成人にとっても永遠の課題(3)
世の中には「物凄い進路指導」もある。
私が高校3年生の時である。担任は駄目な
先生ではなかったのだが、生真面目で
すこぶる面白みに欠ける男であった。
進路に関して相談 しに来いということなので、
私は彼のもとに行った。
何と彼は 「君の家は経済的にも相当苦しい
ようだし、それに成績もあまり良くないようだから、
大学進学などと言わずに、 就職してまじめに
働いたらどうですか 」と言ったのである。
炭坑住宅建設を中心に小さ な土建業を
営んでいた父は、政府による政策の転換から、
顧客を失った。
会社解散後、残った資金をもとでに八百屋に
転じたのだが、それもうまくいかなかった。
高校2年生から3年生にかけ、私は朝の三時に
起きて野菜の仕入れに専念した。
卵はよく売れる貴重品であったが、それを仕入れる
ために、リュックに一斗缶を仕込み、一日に50 ㎞を
歩き続けたこともある。確かに経済的に苦しかったし、
成績も良い方ではなかった。
しかし、永く教師を続けてきた今、当時の私が将来に
期待を掛けることもできぬほどに不出来な青年だっ た
とは思わない。また、そのまま就職してまじめに働いた
として、私の人生に果たしてど れほどの可能性が期待
できただろうか。
その4につづく…