「基礎的知識」が豊かな人間をつくる
「丸暗記」が表現力、思考力をつける(2)

 

しかし知育は、それほどに徳育を害するものなのであろうか。
また知識は、本当に子供達の思考力や創造力を奪い去る
ものなのであろうか。

私は旧制中学で学んだのであるが、当時は先生は、例えば
幾何で、証明問題を一つでも多く「覚えろ」と指導した。

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だが、幾何の証明の仕方を数多く覚えると、補助線を引く
にしても、鋭い閃きが生まれるようになる。

漢文の先生は、教科書一冊を丸暗記するように要求した。
書き言葉は話し言葉の100倍を超える豊かさを持っている。
音読し「丸暗記」する中で、書き言葉が話し言葉のように
肉体化してくる。

人間は話すとき言葉を使うだけでなく、考えるときにも言葉で
考えるから、豊かな言葉は豊かな思考を生む。結局丸暗記が、
豊かな表現力、豊かな思考力となって開花するのである。

基礎的知識が、豊かな思考力、豊かな創造力を生み出すこと
は、学科ばかりでなく音楽や美術のような芸術科目についても
同様である。豊かな知識、基礎的な技術から、豊かな創造力、
豊かな表現力が生まれ、それは人間性の豊かさにも結びつい
てくる。結局、知育なくして徳育など考えられないと私は思うのである。

 

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