蚊帳への郷愁(1)
蒸し暑い夜が続く。
このころになると私はいつも薄緑色のあの蚊帳を
懐かしく思い出す。今では蚊帳など知らぬ人が
多かろう。
夜ともなると、ぷーんと高い周波数の音を立てながら、
蚊は人間を襲った。蚊やりなどをたくが、なかなか
それくらいで退散する相手ではない。
手でたたきつぶしたり、うちわで追い払ったりするが、
寝てしまえばそれもできぬ。
結局この季節には、どの家も、部屋一杯に蚊帳をつるし、
家族全員がその中に入って眠るのが夏の歳時記であった。
その2につづく…
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