フルシチョフさんにご馳走になった貴腐ワイン(3)

宴会が少し進んだ頃、ボーイがフラスコに入ったワイン
らしき物を運んできました。

見る とフラスコの中でカビが浮いています。

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ボーイが各自のグラスにワインを注いでくれました。

私は今もそうですが、アルコールは好きでありません。

特に当時は、酒が好きでないと いう程度ではなく、
積極的に嫌いでした。

ところが土方さんが「小川君、君は酒が好きでない
かも知れないが、これだけは飲め」と 言うのです。

土方さんを深く尊敬していた私は、やむを得ず
その忠告に従うことにしました。

わざわざ土方さんがそこまで言うのだから、よほど
珍しい酒なのだろうと思って一口飲むと、例えよう
もなく美味なのです。

甘く香り高く、その旨さと言ったら、まさに絶品。

私はたちまち全部を飲んでしまいました。グラスの
底や壁にカビがくっついています。「その カビも
指で取って食べろ」土方さんは言います。その通り
にしました。そのカビも、例えよ うもなく深くおいしい
味がしました。

その4に続く…

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