夏の日に思う
受験の知識は現実場面であまり役に立つことがないと
しばしば聞く。しかし、受験生として勉強に励んでいる
中で、気づかされたことがある。それは基礎的な知識を
総合しながら体系化を図ることがいかに重要であるかと
いう点である。
3年生になり多くの先生から激励の言葉をかけられた時に、
これまで私は受験知識の習得のみにいかに固執していたか
を痛感させられた。参考書から得た知識だけでは限界があると
悟ってからは、意識的に課題を発展させていくように取り組み
始めた。様々な知識に有機的な関連性を持たせながら深めて
いくことが大学で研究する時にも役に立つと考えたからである。
大学進学後は社会学の観点から都市計画について研究する
ことを考えている。東京オリンピックの開催が待たれる中で、
都市における人々の居住空間のあり方はどのようなものが
ふさわしいのだろうか。日本の平城京、平安京、古代ローマに
おける都市設計には為政者側の意向が強く反映されたものと
考えられる。しかし、多くの人々を収容する現代都市では人々の
合意形成は欠かすことができない。住みやすさや機能について
実態を調査しながら、都市計画のマスタープランづくりに向けて
本格的に研究を重ねていきたい。
中国の諸子百家の一つに老荘思想がある。これは「無為自然」を
唱え、「道」に身を委ねて自然に身を委ねることを説く思想であると
知った。人為的な営みもマクロの世界からみればわずかなものに
過ぎないという見解は現代では当たり前のことではあるが、それを
二千年以上もの昔に唱えていた老子や荘子の知見は私にとって
かえって新鮮なものに映った。この古代思想を知ったことから都市
社会学への視点も根本的に見直すきっかけとなった。
また、受験知識と一般教養に当たる部分との関連性を見つけることが
とても面白いと感じるようになった。歴史科目の論述問題を解いていく
うちにこうした視点がしばしば問われることも分かり、ますます様々な
一般教養や背景知識を取り込んでいくことの重要性を悟った。参考書
から得た知識をきっかけとし、その背景となっている諸事項との関連を
見出していく視点が、入試を突破することだけでなく、大学生になって
からも不可欠な部分であると感じつつ、額に汗して受験問題に
向き合っている盛夏の一日である。 (高等部3年) 田中 裕基