名作劇場~初めて見たアメリカ兵(2)~
昭和二十年は、大変な食糧難の年であった。
飢え死にした人も沢山居る。九月初めのある日、
私は姉と一緒に、小学校二年生の妹を連れて
山奥の畑にジャガイモを取りに行った。
父は出稼ぎに行っていなかったから、幼いなりに
私は留守宅三人の食糧の面倒を見なければ
ならなかったのである。 この年の食糧難を予想して
父は、山奥の荒れ地を開墾してジャガイモを
蒔き付けてくれてあった。畑に行き茎を引き抜くと、
面白いほど沢山の芋が付いていた。
それを、これ以上詰まらないほど二つのリュックに
詰め込み、姉と私が一つずつ背負った。妹の赤い
小さなリュックにもジャガイモを少し入れた。 重い
リュックを背負い妹の手を引いて「空知大橋」に
かかった頃には、日はすっ かり暮れていた。
空知川(そらちがわ)は北海道第二の大河だ。
橋は呆れるほど長い。暗さの中で、 急にあたりが
明るくなったように感じたので振り返ると、
遙か後方に、これまで見た事もない強烈な自動車
の灯りが見えた。刻々と近づいてくる。少しくらいの
数ではない。当時我が国にトラックは少なかったし、
物資不足の折から、そのライトも まるで蝋燭のように
ぼんやり赤く頼りない感じの物であった。それだけに、
後方の強烈な灯りはただ事ではないように思われた
のである。
その3に続く・・・