北国の山の果実(1)

校長 小川義男

雑事に忙殺され、ゆっくり桜を見る間もなく
今年の春も過ぎていこうとしている。 しかし
北海道の春はこれからである。この文章が
読者の皆様の手に届く頃が、桜の満開の
頃であろうか。遅く訪ねる北国の春である
が、今日は、北海道の山野に自生する
果実について触れてみたい。

北海道の山野には、沢山の果実が自生
している。 もっともポピュラーなのは山葡萄
である。巨峰のように改良し尽くしたうまさは
ないが、味が濃く、捨てがたい。 山葡萄は、
実がまばらについているものがうまい。

冬、スキーで滑ったりしてい て、ごく稀に、
落ちずに残っている房に出会うことがある。
雪中に味わう山葡萄の 味は格別である。

この山葡萄を樽などに詰め込んでおくと、
自然に葡萄液が溜まってくる。昔、白い瀬戸
でできた「焼酎甕(しょうちゅうがめ) 」があった。
下に焼酎を取り出すためのコックがついてい る。
この中に、詰まるだけ山葡萄を詰め込んでおいた
ところ、コックをひねると、 エキス分の濃い葡萄液が
流れ出してきた。多少アルコールも発生していたの
かも知れない。葡萄酒とは違った甘さと酸味とは、
他に類を見ぬ旨さであった。確か五月頃まで、
その味を楽しめたように思う。

(その2へ続く)

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