北国の山の果実(2)

しかし、山の果実の王様は、何と言っても
「こくわ」であろう。大きさは、大人の親指
くらいであろうか。実は青くて固い。これを
米の中に埋めておくと、数日後には、ふに
ゃふにゃになる。それを食べるのである。

口に入れると、甘いとも、酸っぱいとも、
例えようのない味が広がる。木につい たまま
柔らかくなったものはさらにうまい。 面白いの
は、この「こくわ」が、キウイフルーツに酷似して
いることである。種の並び、表面の感じ、果肉
の質、どう考えても同一種だと思われる。

寒冷化が進むのにつれて、本来は熱帯植物
だったキウイが、環境に適応し、実も小さくなり、
表 面の毛も失われたものなのであろう。但し、
味はどういうものか「こくわ」の方が 断然うまい。

しかし「こくわ」は、山葡萄のように簡単には
手に入らない。山も可成り奥に入らなければ、
鈴なりの「こくわ」を獲得することはできない。
しかも困ったことに、 「こくわ」は、熊の好物
でもある。蔓によじ登って「こくわ」をもいで
いたら、熊公 が、「俺にも食わせろ」と、肩を
たたくかも知れないのである。
(その3につづく)

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