冷凍(シバレ)いも物語(4)

 

完全に乾燥すると、父はそれを俵に詰め、
物置にうずたかく積み上げた。 この「乾燥
しばれいも」を食うときには、臼に入れて
杵でつくのである。

最初は、ぱさぱさ、ころころと臼の中で
逃げ回るが、根気よく真ん中の一カ所を
ついていると、いもはネズミ色の粉になって
落ち着いて来る。

それをさらに根気よくついていると、非常に
きれいな、しっとりした粉末になるのである。
これを水でこねてフライパンに広げ焼いて
食う。

ただの澱粉と違い、いもの 繊維が混じって
いるので絶妙な味がする。あるいは、冬から
春にかけてのある 種の発酵も、その味に
関わっているのかも知れない。

今振り返って、父が有していた生活力の
たくましさ、賢さには一驚せざるを得ない。

彼は一体どこで、あのような生活の知恵を
身につけたのであろうか。 今日は豊かな
時代である。だが、食糧難時代が再び
やって来ないという保障はない。

先人の、生きるたくましさと賢さが懐かしく
偲ばれるのである。

(完)

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