日本的思想の深さを(4)

 

かくして、乱費してきた化石燃料が枯渇(こかつ)
するだけでなく、地球上に存在する 酸素の絶対量
までが不足してこようとしている。脊椎動物が生き続
けられるだけの酸素は、後百年保 も たないという説
さえあるくらいである。

ここで問われているのは、産業革命以来の傲慢(ごうまん)
な価値観なのではないだろう か。ヨーロッパ文明は、
自然を変革の対象と考えがちであった。自然は彼らに
取り、征服の対象だったのである。

これに反し、我が日本の文化は、自然にう ち解け、
自らも自然の一部であると考える文化だったのでは
ないだろうか。 「豊かなことは良いことだ」「便利なことは
良いことだ」という哲学は、結局人類を滅ぼそうとしている。

自然の片隅で、自らも大自然の一員であることを自覚し、
謙虚に、控えめに生きることが、今何より大切なのでは
ないだろう か。産業革命以来の西洋の哲学を克服し、
日本的な生き方、アジア的な生き方が今求められている。

現代の高校生に望むことは二つある。

一つは読書である。

今ひとつは、常に 「本物」に接触して感性を磨くことである。

そのことを通じ、私は人類を救出できる新たな理念を、
彼ら次の世代によって確立してくれることを願うのである。

(完)

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