廃墟の悲哀(1)

私は 歳の時に、熊が出るような田舎の中学校に就職した。
正式に言えば 18 助教諭、いわゆる代用教員である。

四年間勤め、その後大学に進学した。しか し、農村で
過ごした四年間が、人生でもっとも充実した期間だった
のではない かと思う。

その村も人口が十分の一以下に減少し、昔日の面影は
ない。勤務していた中学校も今はなく、併設されていた
小学校も廃校になった。今は校舎の土台すら 残ってお
らず、当時のグラウンドが、ただ広い空き地となって残っ
ている。

校庭一杯にさんざめいていた子供らの賑やかさも、それを
偲ぶよすがとてない。 このほかにも、私はいくつもの都市が
廃墟となっていく姿を見てきた

「故 。 郷の廃家」という歌を聴いて育ったせいか、私は廃墟
に特に強い関心を抱いている。 北海道の赤平市は、石炭
産業の城下町とも言うべき大都市であったが、炭坑が閉鎖
された後は、開発以前の大自然に立ち返ってしまった。
今は訪れる人も 少ない。

 

その2に続く…

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