廃墟の悲哀(2)

炭坑ではズリ山が町の象徴である。地中から
掘り出した石炭には、いわゆる 「炭ガス」が混
じっている。そのカスと石炭とを選別しなくては
ならない。

カスを捨てた山がズリ山なのである。

30度の三角定規を伏せたような形の山である。
緩やかな方の斜面からトロ ッコが上っていき、
頂上付近から急斜面の側へ炭カスを落とす。

ズリ山全体が真っ黒だし、自然発火する箇所
も多く、あちこちから煙が上がっている。一目で
分かる炭坑町の象徴、それがズリ山の姿なので
あった。

しかし数十年を経て赤平市を訪れたが、幾つも
あったズリ山が一つもなくな っている。よくよく辺りを
見回してやっと分かった。

30年の間に、ズリ山は  大木に覆われてしまって
いたのである。山の形をよく見つめると、すっかり
緑に覆われてしまっているのだが、形がどうやら
「 30 度の三角定規」に似ている。それが大自然
の緑に包まれてしまったズリ山の姿なのであった。

あれほど沢山あった炭坑住宅、俗称炭住(たんじゅう)
も、その跡形さえ伺うことができない。

すっかり大森林と化してしまっている。

 

その3に続く…

 

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