廃墟の悲哀(3)

炭坑が次々につぶれ始めたのは、昭和35年頃からである。

その頃しきりに 「エネルギー革命」ということが叫ばれた。

つまり石炭よりは石油の方がコス トが安いから、エネルギー
は次第に石炭から石油に変わっていくというのであ る。

「左翼」は強くこれを否定した。 私は当時年も若く、赤平市立
赤間小学校教職員組合の分会長をしていた。い くつもの炭坑、
特に赤間炭坑の労働組合には しばしば激励の演説に出かけた。

その頃、炭労(日本炭坑労働組合)は、このエネルギー革命を
否定する立場を 取っていた。日本共産党・日本社会党(今の
社民党)の活動方針に追従する結果そうなったのであろう。

彼らの主張ははっきりしていた 「エネルギー革命」というのは、
アメリカに従属する日本独占資本のデマ宣伝である。彼らは、
アメリカ石油資本の利益に迎合するために 石炭を犠牲にして
石油を取り入れようとしているのである 。

アメリカの植民地政策さえはねとばすことができれば、炭坑
閉山などは行わずに済む。政府並びに独占資本は、むしろ
労働者の賃金を切り下げるために「エ ネルギー革命」を唱え
ているのであって、そのデマ宣伝さえ打ち破れば、炭坑閉山
など爆砕することができる。それが彼らの主張であった。

対米従属という主張は理解できないわけではなかったが、
私は「エネルギー革命」を否定する彼らの主張には根拠が
ないと考えた。液体で出てくる石油と、時には地下数千メー
トルから掘り出さねばならぬ石炭では、喧嘩になるわけが
ないからである。

 

その4に続く…

 

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