偉人の伝記に親しませよう(2)

 

西郷隆盛は、当時我が国でただ一人の陸軍大将であった。
彼の月給は五百円だったそうである。言うまでもなく当時、
大変な高給であった。金に関心のない西郷は、これを
太政官に返そうとしたが、法律的にそれは不可能である。
明治の体制にあっても、 政治家、官僚の「政治寄付」は、
厳しく禁止されていたからである。

彼は下男と共に六畳二間の借家に住んでいた。二人の
生活費としては十五円あれば十分であった。維新の元勲
と下男が、秋刀魚でも焼いて食っていたであろう姿を思い
浮かべると、ひとりでに口元が綻んでくる。

一月の給料で一年は暮らせた訳だから、 残りの給料は
封も切らずに棚の上に投げ上げられ、そのままほこりを
かぶっていたそ うである。

治安の良い時代の事とて、泥棒の手合いに盗まれることも
なかったらしい。 西南戦争における西郷の死は、滅び行く
武士階級への「心中」だったと私は考えてい る。

「公あって私なし」の西郷にして初めて為し得る事だった
のであろう。この「心中」 を以て西郷は、盟友大久保の志を
遂げさせようと考えたのではあるまいか。

西郷は、 それほど桁外れに大きい人物だったのである。

 

その3に続く…

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