日本語の深さについて(3)

 

「いつしか歳も 杉の戸を」の部分に注目してほしい。

「いつのまにか、歳月が過ぎていったので」という
意味なのだが、それなら「いつしか歳も 過ぎぬとお」
と書くべきではないだろうか。それに「スギノトオ」では
言葉としてもおかしい。

実はこれが日本語特有の「かけことば」というもの
なのである。

昔の体育館の扉は、木造校舎だから杉の木で造られて
いることが多かった。今日の鉄筋コ ンクリートの体育館の
ドアは多く鉄製である。

昭和35年 開校式当日の狭山ヶ丘高等学校

「杉の引き戸 、何と風情のある体育館、講堂だろうか。
卒業生はその杉の引き戸を開けて、住み慣れた学舎を
後にすることになる。

「明けてぞ今朝は 別れ行く」これも同じである。

勿論意味は 「夜が明けて 今朝は別れゆく」と言う
意味なのだが、これに「杉の戸を 開けて」とい う意味が
重ねられているのである。

昭和39年 旧木造校舎と当時の生徒たち

その4に続く…

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