ひとりで行った入学式(3)

 

ともあれ私は校長の話に耳を傾けた。
眼鏡をかけた校長であった。校長は、
くどいくらい繰り返して「教育は本当に
難しいものだ」と語った。

少し繰り返しすぎたよう に思う。私は
「そんなこと嘘だあ。一年生に勉強を
教えることが難しいわけがあるか。
大人が一年生に勉強を教えるんだから、
易しくてたまらないだろう。それを難しい、
難しいと何回も言うんだから、この校長
先生は変だよなあ。嘘を言っているよなあ。
何でこんな嘘を言うんだろう。」と考えていた。

そのあと、どんな経過を踏んで帰宅したのかは
記憶にない。しかし、小学校の一年生が、あの
ような批判性を持って校長の話を聞いていたり
するものだということは、 心に銘記しておかなけ
ればならないと思う。

また、先輩にくっついてとは言いながら、ひとりで
入学式に出かけるとは、私も相当変わった子ども
だったに違いない。

「人間に生まれながらの能力差はない」とは、
私の信念だし、狭山ヶ丘高等学校の根本理念
ではある。しかし性格や個性となると、生まれな
がらの違いというものは、相当色濃く存在して
いるのではないだろうか。

 

その4につづく…

ページ
TOP