朝鮮人の思いで(4)

 

近所にS 君という朝鮮人の子がいた。

お父さんは「雑品屋」と言って、今で
言う廃品回収業のような仕事をやって
いた。金持ちである。

あるときS 君と私は、親切な馬車追い
のおじさんに馬車に乗せてもらって
下校した。

遠くに「サッポロミルク」という看板が
掲げられていた。ところが「サ」の字だけ
落ちて取れてしまっている。

カタカナをようやく覚え終わった頃の
私は、その看板を「ツポ ロミ」と拾い
読みした。

滑らかに読めないわけではないが、
その時の私は、何気なくそれを一文字
ずつ区切って拾い読みをしたかった
のである。

ところがそれを S 君は聞いていた。

彼は、私が拾い読みしかできないと
でも思ったのであろうか 「 『ツポロミ』
でないか」と早口で読み、私を批判した
のである。

子供心にもやりきれない思いがした
「これだから朝鮮人は嫌だ」とも思った。

しか しS 君は家が一番近い通学仲間
だったし、その後も仲良く通学した。

小学校の一年生の一学期に二回も
転校した私に取り S 君は大切な友達
でもあったのである。

大人になった今思い返すと、魅力的な
性格の持ち主だったように思う。

S 君は今も健在であるかも知れない。
あるいは大変な成功を収めているの
ではないかとも思うのである。

 

その5につづく…

 

 

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