ホストの家での3日目、今日も子供たちは元気に登校してきました。
今日の一時間目は、オーストラリアについての質問会でした。当初予定していた日本語の先生への質問ができなくなったのですが、この間ずっとお世話になっているマークさんが、代わりに子供たちの質問に答えてくださいました。これは、事前学習で、発表会を開いたときに抱いた質問を現地の方に答えていただこうというものです。
質問は、どれも難しい内容でした。最初にマークさんが見たときに、大学生の質問のようだとおっしゃっていました。通訳は、この学校で日本語の授業を担当されているミチコ先生が行ってくださいました。全部で4つの質問をしました。以下、その質問と回答をまとめます。
1.ゴールドラッシュで金がどの位とれたのですか。
1852年ニューサウスウェールズ州のベッサスにいたエドワードさんが、26.4tの金を掘り出しました。しかしそれでも少なくて、ビクトリア州では1年間にこれ以上の金が取れました。マークさんが子供の頃は、あちらこちらに金の採掘跡のトンネルがあって、金を見つけに行ったそうです。

2.白豪主義の問題となった点はどのようなことですか。
政治的な意味があり、社会を分断するものでした。具体的には白人と他とを分断します。つまりヨーロッパとアジアの分断を意味します。分断ということは、それぞれの違いを際立たせてしまっていることを意味します。オーストラリアは、アジアに近い国ですが、この結果、交流に限りが生じてしまいます。それはちょうど江戸時代の日本の鎖国に似ています。
ではどうして白豪主義が生じたのでしょうか。それは江戸時代の日本に似ています。鎖国をしているということは、日本が一番、日本の文化が一番と言っていることになります。白豪主義は、キリスト教と深い関わりがあります。ヨーロッパは、ほとんどの人が白人です。そしてまた、その白人はほとんどの人がキリスト教徒です。違う人種が集まっていた国をまとめるためには、みんな同じという考えを使うことが、その国のリーダーにとってまとめやすいという考えに立っています。つまり白豪主義は政治的にまとめていくための道具に過ぎなかったのです。言い換えるならば、1つにするために、大多数の人の考えを作り出していく必要があったことになります。それが、白人の優位性をうたった白豪主義なのです。
でも今は、この考えが間違いであったことに皆気づいています。

3.オーストラリアと日本は、昔戦争をして戦った過去があります。どのようにして両国の友好を深めていったのでしょうか。
これは、私の(マークさんの)好きな質問です。それは、2つの点から明らかです。一つは、今の2つの国がお互いに友好的であると見えているということが挙げられます。もう一つは、これまでに、このような交流のプログラムの中で、ホストファミリーがみな、日本は素晴らしい国である。日本の文化は素晴らしいと言っていることです。では日本の素晴らしさはどこにあるのか。それは、戦争があったからです。戦争を通し、またつい最近あった東日本大震災の際の津波を通し、オーストラリア人と日本人が同じであるということが再確認できました。同じ事とは何か。それは、一つには、母であり、父の存在です。また希望や夢を持っている。体のつくりも同じです。その同じ人間が、広島であったこと、戦争というつらいことがあって、深い悲しみを感じました。その悲しみから日本の戦争放棄、そして平和の強い考えが芽生え、国際関係の作り方がうまくできるようになっていったのです。そうした日本の姿を見て、オーストラリアの人も友好関係を抱くようになったのです。同じ人間として、受けた悲しみを同じように感じることができたからなのです。
次のような言葉があります。
“Do unto others as you world have them do unto you.”
これが一番の理由です。

4.オーストラリアの人たちは戦争で戦った日本を恨まなかったのですか。
マークが日本に行ったときに強く感じました。それは、日本人が戦争で何をしたのか、深く考えているということを。大きな被害を受けました。その被害を通し、日本人が、“Hunility”を持ったからです。”Hunility”とは何か。日本は戦争で傷を負い、自らが何をしたのか振り返り、平和の大切さに気付いていった。このような謙虚さを“Hunility” と言います。そして、日本が平和の中心となりました。償っていこうと日本は国際社会の一員として頑張っています。だから憎まなかったのだと思います。
政治的な点から考えるならば、戦争をしたのは、親の世代ではなく、祖父母の世代です。遠い昔のことです。もし恨む相手がいるのだとすれば、当時の軍部の命令を下した人に向けられるべきことです。
別な言い方をすれば、あなたたちはオーストラリアの人に戦争について質問を受けましたか?そのようなことはなかったはずです。つまり、気にすることではないのです。

今の子供たちに向け、真剣に考えてくださった一つの大人の考えを示してくださいました。難しい内容でしたが、子供たちの心にマークさんの強い思いが伝わったように感じられました。

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