前々回の全校集会で、大学入試センター試験の問題を解いてみてくださいという話をしました。

国語の2番の問題は、井伏鱒二の小説からの出題でした。井伏鱒二は、『山椒魚』や『黒い雨』の作者として皆さんもよく知っていると思います。

今回の小説『たま虫を見る』の問題を解きながら、問題文の注釈に興味がわきました。

問題文の一部を読み上げます。

おそらく私ほど幾度も悲しいときにだけ、たま虫を見たことのある人はあるまいと思う。・・・私が十歳の時、私の兄と私とは、叔母につれられて温泉場へ行った。叔母は私の母よりも以上に口やかましい人で、私があまり度々お湯へ入ることを厳禁して、その代わりに算術の復習を命じた。そのため私は殆んど終日、尺を里・町・間になおしたり、坪を町・段・畝になおしたりした。・・・

この文章の中に3箇所注釈が加えられ、次のように書かれていました。

最初は「たま虫」で、「光沢を持つ甲虫の一種。金緑色に赤紫色の二本の縦線がある。また、

光線の具合によって色が変わって見える染め色・織り色をたま虫色という。」

次が「尺」で、「長さの単位。「里」「町」「間」も同じ。」

 最後が「坪」で、「面積の単位。「町」「段」「畝」も同じ。」

「たま虫」に注釈がつくのは分かりますが、「尺」や「坪」は意外でした。今の高校生には、「尺貫法」についての説明が必要になっているんだなと感じました。

メートル法が使われていますが、その一方で、「6尺を一間」「一間四方を一坪」のように昔か

らの生活習慣で今でも使っている尺貫法の単位があるのは知っていると思います。

 

1メートルの単位は、最初は「地球を一周する子午線の長さの4千万分の1」と定義されました。

1メートルの単位が決まったので、次に一辺の長さが10センチメートルの立方体の容積を「1

リットル」と定めました。「1キログラム」は、その「1リットルの水(セ氏3.98℃)の重

さ」と定義されました。それぞれの基準となる「国際メートル原器」「国際キログラム原器」は、

狂いの少ない白金とイリジウムの合金で作られました。

ところが科学の進歩は目ざましく、現在は「ナノ・テクノロジー」の時代と呼ばれ、10億分の

1の単位での正確さが必要な時代になっています。

そこで、1メートルの単位は、現在は「光が真空中で2億9979万2458分の1秒間に伝わ

る行程の長さ」が使われています。

フランスにある「国際キログラム原器」も、現在は0.06ミリグラム軽くなってしまったそう

です。質量のナノ・テクノロジー化は難しく、この「国際キログラム原器」に頼らなくてもすむ

新しい質量の定義を確立すればノーベル賞も夢じゃないと言われています。

地球の自転速度・公転周期と原子時計(セシウム133原子が出す電磁波の周期)との差を解消する「うるう秒」が話題になっていますが、存続か廃止かの結論は先送りになりました。

 

このように、社会の変化によって変わっていくものがありますが、その一方で変わらないものも

あります。

変わらないものの一つが、中学・高校生活の重要性です。大人の人に、「もし戻れるとしたら、

いつの時代に戻りたいですか?」という質問をすると、ほとんどの人が「中学・高校時代」と答

えます。理由はそれぞれ異なると思いますが、中学・高校時代とその後の人生とは深く結びつい

ており、中学・高校生活がその後の人生に大きな影響を与えていることは間違いありません。

皆さんは、もう一度自分の学校生活を振り返ってみてください。

 

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