その授業は2時間目の終わり近くで、高校1年生の英語Ⅰ、コミュニケーション英語の時間だ。
授業参観には日常的に慣れていて、来室者に驚くことはほとんどないが、この日はちょっと違っていた。入室者の方を見ながら目で軽くようこそサインを発し、驚きを飲み込むしぐさが見られた。ご案内しているお二人のお客様が外国の方なので、おやっと思ったに違いない。
授業は、二人目の生徒が英語でスピーチをし、そこで全員の発表が終了となった。

すると、わたくしの隣で生徒のスピーチを聞いていた、Ms. Rita Bibra女史が、「Verry good!」と笑顔で声を発し、私もスピーチをしてよいかと問いかけた。予期しない発言に教室中のみんなが湧いた。「もちろんです」と応ずると、Ms. Rita女史は席を立った。
生徒は、一瞬、これから何が始まるの?外国の方がどんなことをお話してくださるの?ちょっとわくわく…、色々な思いがその場で交錯したように感じられた。

 

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Ms. Rita Bibra女史は、黒板の前に立ち、ご自分がインドから来たこと、日本の規律ある教育現場を見に来たこと、インドのことでは、公用語はヒンドゥー語、共通語は英語であること、さらにインドの地図を黒板に描き、インドの自然や気候、風土や文化が地域によって大きな違いがあることを ゆっくりと丁寧に、分かりやすい英語で、表情豊かに話された。この日の服装は、ジャケットとスラックス。日頃、学校ではサリー姿と伺い、サリー姿を拝見したいとの思いがつのった。

生徒は、目を合わせてスピーチを聞き、興味深く目の前の異人種・異言語・異文化の世界を実体験することができた。一人一人が嬉しそうな表情を見せ、お話が終わると拍手が起こった。教室全体にほっこりとしたおだやかな空気が流れた。人と人が出会い、かかわり、心を通わせる瞬間や時間が、教室の空気を和ませたようである。Ms. Rita Bibra女史のスピーチは、予期しない出来ごとであったが、コミュニケーション英語の授業は、願ったりかなったりの時間になった。ふれあうこと、顔を合わせて言葉を交わすことの大切さをその場にいたみんなが実感する時間になった。

 

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