冷凍(シバレ)いも物語(3)
だが父は少しもたじろがない。すでに大量の
四斗樽を買い込んでいて、この中に、その
「腐った」いもを入れろと私に命ずる。中学一年
の私にとり、それは大変な仕事であったが、
父の命令とあれば嫌だというわけにもいかない。
その指示のまま、何日もかかり、そのいもを四斗樽
に移した。そして満々と水を 張った。
今度は、その水のすべてを毎日入れ換えなければ
ならない。今のような水道の時代ではない。ゴックン、
ゴックンとポンプを押し、10本近くの四斗樽すべ てに
水を満たさなければならないのである。樽を傾けて、
いもをこぼれさせず、 水を捨てるだけでも楽な仕事
ではなかった。
それに「腐っている」のだから、 臭いもすごい。
しかし、半月もするうちに、臭いは全くなくなり、水も
きれいに澄んで来た。 その報告を受けた父は、
むしろを庭先に並べ、その上に「しばれいも」を広げ
させた。天日で乾燥させようというわけである。雨の日
の取り込みは大変であったが、そのうち、いもは、
からからに乾燥してきた。いつの間にか皮は取れて
しまい、「実」だけが、もとの五分の一くらいの大きさに
なって乾ききっていた。
丁度ネズミ色の軽石のようであった。
その4につづく…