皆さんこんにちは。学校長の宍戸崇哲(ししどたかのり)です。毎月1回、校長としての私の感じたことや考えを「宍戸校長の【Back to Basics】」と題して、本校HPで発信していきます。学校や生徒のことを中心に社会の出来事なども交えて、皆さんと何かを共有できればと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。今回は「英検まつりの歩み」と題してお届けいたします。

 

「10月の英検受検者数ですが、全校で1級17名、準1級82名、2級192名となります。」

と「英検祭り」実施責任者の教務部長から、会議の席上で発表があった。私は思わず聞き返したが、間違いないという。例年と比較して、特に1級受験者が大きく増加している感があり、私自身驚きがあったからである。現在の社会情勢下で学びを継続するのが困難な中、自律して英検対策を行った生徒たちの努力、それを様々な工夫と指導力で支えた英語科の教員、さらに本校の英検祭りは全校で行うため、全ての教科の教員が指導に加わる。学内予備校の講師も卒業生チューターもサポートする。まさに学校の総力を挙げての取り組みである。これまでの関係者の様々な努力や苦労を振り返ると、道半ばではあるが、大変感慨深い気持ちになった。

 

9月下旬、全校による「英検祭り・秋の陣」が始まった。

今年の夏の陣はほぼ実施できず、主に生徒たちが家庭で自主的に行う形であった。今回の秋の陣で初めてのリアル実施となった。教室に入って生徒たちの様子を見ると、iPadの学習アプリを利用して黙々と英単語に向き合い、次々と問題をこなしていく。数年前から単語の音を聞き、同時に視覚的に確認して記憶する形式とした。リスニング力養成の観点から考えると、ある文脈の中で一定程度の長さの英文を聞くことが最善と思うが、単語の正しい発音やアクセントを確認できる点で進化したと考えている。「これだけでは覚えられないんです」と言って、従来のようにノートに書いて覚える生徒もいる。やはり五感を駆使した記憶法がより効果的であると感じる生徒もいるようだ。また、煩雑だった達成度の集計作業もすべてプログラム上で処理されるようになった。

 

「英検祭り」は2003年から実施しているが、私が本校に異動してきた2007年、NZで留学を終えた高校3年生の教室では現在と全く違う光景が広がっていた。

ボロボロになった英単語集を片手に、ひたすら単語シートに書き込んで、生徒が自己採点している。担当教員は200〜300枚のテスト用紙を教卓に置き、その日の活動の定刻になると、各生徒が合格した枚数を指定の用紙に書き込み、クラスごとにその枚数を競う。後日、優勝クラス、優秀生徒が決定するという流れだ。生徒たちの行事としての思い入れは今以上で、競うことを楽しみながら必死に英検に取り組んでいた。それでも上位級の取得者数は、全校で2級が十数名、準1級0、1級は当然0という状況であった。当時の学校長からは「先生、英検1級合格者を何とか出したいが、どうしたら良いか。」と相談された。相談というより「あなたが準1級、1級を出す方策を考えなさい。」と命じられたということである。その時は率直に「準1級は可能性があるが、1級取得者を出すのは、まず難しいだろう」と思った。それから2年後、留学クラス6期生から待望の1級が2名出ることなり、準1級にも全校で数名合格した。この時から本校は試行錯誤や苦労を重ねて、様々な策を講じ、徐々に上位級の合格者数を増加させてきている。近年では全校で毎年1級4名、準1級40名の合格実績を挙げるまでとなった。中学入学時に英検未習得者が6年かけて、高校卒業時に1級に至る事例も出てきた。

このような状況に興味を持たれた学校関係者が本校を見学され、この部分に関して「どうやったら?何をしたら?」と聞かれることが多い。その問いに明快にお答えするのは難しいことであるが、敢えてするとすれば、

「それぞれの取り組みが相互作用して、想定を超えた結果を生み出している」ということであろうか。

全教科、学校全体が、行事の1つとして英検に取り組む仕組み、明るく前向きで努力を惜しまない生徒たちの気質、英語を使うことが自然である日常、英語に特化した中学カリキュラム、ネィティブ教員がリーダーを中心に一定のレベルで生徒を指導していること、中学イマージョン授業、留学クラスやSGクラスの存在と取り組み内容、独特な海外研修、英検合宿、教員と学内予備校講師との連携、英検上位級取得者のチューターの活躍などが、絶妙に、互いに作用し合いながらの結果であるのではないかと考えている。

本校が「英語の佼成」「グローバルの佼成」とご評価をいただいて久しいが、中学イマージョン教育、NZ留学コース、S G H、海外修学旅行、海外研修などは、上記の英検と同様、多くの先進的教育内容や様々な人の努力で成り立っているもので、決して表面的、局所的な取り組みでなく、プログラムの存在、目的地選定や実施方法にもそれぞれに思い入れと深い意味があることをお伝えしておきたいと思う。だからこそ生徒たちの真の学びにつながると考えている。

「英語を学ぶこと」は、「英語で学ぶこと」に一本道で繋がっていて、時に互いに行き来があるように思う。本校では、そのどちらも身につけるために、今後さらに「学ぶ環境や場所・時期・方法」を大切に考えて、学校全体で協力しながら取り組みを進めていきたいと思う。

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