ご閲覧誠にありがとうございます。
 
  前回は読書嫌いになる元凶の一つとしてあると思われる、「読書感想文に対する取り組み方」を通して「読書をすることで幸せになる」という感覚を早い時期から身につけた方が良いという話をさせていただきました。

  2回目である今回は「そもそも本は何を読めばいいの?子供が本を選べない」ということについてお話しさせていただきます。

  本は元来、人から押し付けられて読むものではありませんよね?そのテーマ(題名等)に興味があり知りたいから、あるいはその作者が好きだから、または表紙が綺麗だから、というような動機が存在した上で読む。ですから能動的な活動のはずです。
  それが受動的な活動になってしまうカラクリがいくつか存在しているように思われます。再びわかりやすい例として「読書感想文」という課題から考えると、学校側から推薦図書や課題図書が提示されていることが多くあります。もちろん限定された受け身の読書となります。本来の読書の目的は「知りたいから知る」という知的欲求から来ているものなのに、「他人に感想を書くことで読んだ証拠も見せる」になってしまっています。
  さらに、「感想」を後で書かなければなりませんので、ここで自然と選ばれるものは「物語文」とよばれるものになるはずです。決して科学的な本や図鑑にはならない・・・はずなんです。ところが、学校側から推薦されたものの中に科学的なものが入っている時があります。例えば、江川多喜雄『10分でわかる!科学のぎもん 4年生なぜだろう なぜかしら』(実業之日本社)や、理化学研究所が推薦している「科学道100冊」の中にある「物語文調」ではない本。どれも優れた本ばかりですが、「読書感想文」としてはいけません。なぜなら「感想文」とは、それを読んで登場人物の気持ちや行動から感じたこと・想ったことを書いた文のことを指すからです。科学的な本で感想文を書くと「〇〇の仕組みがわかり、大変面白かったです。僕も将来〇〇の研究者になりたいと思いました」というように、だいたい決まったことを書くことになってしまうんですね。確かに科学的書物でも上手に感想を書ける人もいます。内容から疑問点を見出し考察する。さらに仮説を立てて検証しその結果を感想とする。しかしこれが可能なのは能動的に読書を行った場合にできることです。受等的に誤って科学的な書籍を選んで「読書感想文」を書こうと思ったら、「面白かった」「役にたった」というような気持ちしか出てこない。そんな感想、大人は納得がいきませんから「もっとあるでしょ!」になってしまいます。書く方も読む方も嫌になるだけです。だから「物語文」とよばれているジャンルから選んで読み、あらすじ(内容をしっかり順序立てて読めているかの確認)と、読者それぞれの感性から出てくるオリジナルな意見を自由に入れるのが望ましく、それが「感想文」になるのです。
  科学的な書物が、「読書感想文」としての推薦図書や課題図書に挙げられているのには理由が他にあります。最初に述べた「そもそも本は何を読めばいいの?子供が本を選べない」という我々大人の経験からの要望や、もっと実用的なものを読ませたい、子供の興味も人それぞれなんだから幅広く読ませたいという善意が、このあべこべな作文状態(変な感想文)を結果的に作らせることになり、読書嫌いに繋がっているとも言えると思います。ですからまずは「読書感想文」を書くのが目的ではなく、能動的な読書スタイルを作ることを優先させましょう。

 ① 推薦図書や課題図書として押し付けられ、本来能動的な読書活動が受動的になっている。
 ②  科学的な書籍を選択し「読書感想文」を書くと褒められるような文を書くのは容易ではない。
   
  本の選定は「題名」「表紙の絵」「作者」「趣味と関係がある」などを手がかりに探しましょう。みなさんもそうやって手に入れた本、尊敬する人方勧められた本、思い入れのある本(よく覚えている本)がありますよね。それを今小学生のうちに作ってあげるのです。読み手本人が実際に手にとって見て「出会った!」と感じた瞬間をこちらが見逃さないこと、これが重要だと思います。ある程度の誘導、例えば本屋や図書館の中で大きく「このエリア(この数列の棚)から面白そうな本を探してみよう!」でも良いと思います。ネットショッピングなどで表紙をいくつもピックアップしておいて、俗に言う「ジャケ買い」方式でも目星をつけて実際の本を手に取ってみる。もし理化学的な本に興味があるようであれば、「読書感想文」は抜きにしてまず読ませてみる。毎日本に触れていることが将来のしっかりとした読書家を育てる上で大事なことだと思います。

※ 本校では夏休みに「読書感想文」という大雑把な宿題は課しません。作文は作文として「税について」「JICA応募作文」「SDGs(探究活動)について」などで課します。合わせて「文章能力検定」に力を入れ、作文能力を鍛えておりますので「一冊の本に対する感想」  は求めていません。
※ 読書の記録や本の相互紹介は普通に行っております。その上で「ビブリオバトル(書評合戦)」に力を入れております。自分で選んだこれは面白いと思う本を、どれだけ多くの人に読みたいと思わせられるかというゲームです。推理小説ならそこで犯人を言ってしまったら読んでもらえません。思考力と表現力が鍛えられます。

是非 本校へ遊びにいらしてください。お読みいただきまして誠にありがとうございました。

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