「100年以上前に建てられた本校女子寮の屋根裏から発見された埃まみれのトランク。

           現在、生徒たちの手によって、その調査が進んでいる。名づけてトランク探偵。」

【 トランク探偵第9回 】

2学期にはじまったトランク探偵。

 

トランクが本館屋根裏に放置され、そのままになっていた謎を解くべく、3学期に行ったことは、本館の歴史を探ること、であった。

 

3学期は、学校に伝わる資料を集め、ひたすらこれを読んでいた。資料は以下のとおり。

  ① 立教周辺の地域史

     立教の所在地はホーシャム市ラジウィック村。

     ここには村が発行する機関誌があり、これに連載された地域史の中に

     立教にも関わる記事があった。ロジャー・ナッシュ氏という地域史家が

     執筆されたもの。

  ② MRS.TOOLEYの学院史

     MRS.TOOLEYは以前学校秘書をしておられた方。

     立教創立期から勤めていらっしゃった。

  ③『ゲームキーパーの娘』という資料

     正門脇のロッジという建物には、立教より前から門番をしていらっしゃった

     家族が住んでおられた。そのご家族の娘さんの手記。

 

とにかく全部英語なので、生徒探偵たちは辞書を引き引き、解読することになった。

5年ほど前にオープンデイで、中1が学校史を展示したことがあった。

この時の資料が参考になるとしても、高校生ゆえに探偵たちは改めて資料を読み込む必要がある。すべて英語となると、やはり簡単にはいかない。解読で3学期を費やしてしまった。しかし探偵諸君は本当によく頑張ってくれた。英語資料を読むということは、非常に難しい。ただ読むだけではないのだから。

 

そして

トランク解明に関係する部分は「ほんの少し」だった。

長い英語解読作業と、この結果につまらなくなってきた(かもしれない)探偵たち。

「初めはゼロからだから発見ばかりだけれど、そのあとはとっても地道な作業だよ!」と言っていた先生の言葉の意味がいまになって実感を伴う。

知りたい言葉を入力すれば、すぐに答えが判明するコンピュータと違って、世の中のほとんどの事項は、長い長い時間を費やして、答えが見つかるか見つからないか、見つかっても小さなことであったりするものである。資料も関係のないところまでしっかり読み通さなければ、どこに役に立つ情報が隠れているか分からない。

「知る」ということがどういうことか、ほんの少し分かったような気がしているのではないだろうか。

 

さて、本館のたどった歴史を概観してみよう。

 ① 1890年にアーウィン・シューマッハ氏が本館のみを買い取り、居住。

 ② 1919年に売却され、マックアンドリュー氏が購入。

    彼が亡くなる1959年まで滞在した。

 ③ 1959~1960年代 空白の期間。

 ④ 1960年代 ホテルになる。

 ⑤ 1972年に立教が買い取り、学校になる。

 

手紙の1916年、ハガキの1920年にしたがえば、トランクが放置されたのは、

   シューマッハ氏からマックアンドリュー氏に売却された頃

または

   マックアンドリュー氏が居住していた頃

ということになる。

 

さて、シューマッハ氏、マックアンドリュー氏とは何者か。

 

 

トランク解明には直接結びつかなかったが、

立教英国学院の本館の長い歴史が読み解かれてきた。

いつかこの資料をきちんとまとめ、光を当てたいものである。

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