日本語の深さについて(3)
「いつしか歳も 杉の戸を」の部分に注目してほしい。
「いつのまにか、歳月が過ぎていったので」という
意味なのだが、それなら「いつしか歳も 過ぎぬとお」
と書くべきではないだろうか。それに「スギノトオ」では
言葉としてもおかしい。
実はこれが日本語特有の「かけことば」というもの
なのである。
昔の体育館の扉は、木造校舎だから杉の木で造られて
いることが多かった。今日の鉄筋コ ンクリートの体育館の
ドアは多く鉄製である。
「杉の引き戸 、何と風情のある体育館、講堂だろうか。
卒業生はその杉の引き戸を開けて、住み慣れた学舎を
後にすることになる。
「明けてぞ今朝は 別れ行く」これも同じである。
勿論意味は 「夜が明けて 今朝は別れゆく」と言う
意味なのだが、これに「杉の戸を 開けて」とい う意味が
重ねられているのである。
その4に続く…