令和3年度大学入学共通テストの第二日程が1月30日(土)と31日(日)に実施されました。
その問題は新聞には掲載されていませんでした。とても残念です。
「共通テスト」第二日程の国語の「第2問」の問題文は、津村記久子「サキの忘れ物」(2017年発表)の一節で、
「高校を中退し、病院に併設されている喫茶店でアルバイトをしている18歳の千春が、『女の人』との出会い、更にその『女の人』が忘れていった文庫本をきっかけに心が変化していく物語」
とまとめることが出来ます。
前回の記事を引用すれば、「子供が大人に成長する物語」というシンプルな言葉で表現できます。
新聞に「共通テスト」第二日程の国語の「第2問」の問題文が掲載されていれば、多くの人が気軽に物語を楽しんだり「国語のルール」とか「物語の基本型」とかを改めて学ぶ機会になったりしたのでしょう。その機会がなかったのはとても残念です。
「本を読むこと」に関する千春の気持ちは、次のように表現されていました。
「心が変化(成長)」している部分ですので引用します。
昨日本を買って帰った千春は、いろんな話の書き出しを読んでみて、自分に理解できそうな話を何とか探し、牛の話を読んだ。牛専門の画家が、隣の家の庭に入り込んで、おそらく貴重な花を食べている牛を追っ払おうとするが、逆に牛は家の中に入り込んでしまい、仕方ないので画家は牛を絵に描くことにする、という話だった。牛専門の画家というのがそもそもいるのかという感じだったし、牛が人の家の庭にいて、さらに家の中に入ってくるというのもありえないと思ったが、千春は、自分の家の庭に牛がいて、それが玄関から家の中に入ってくると思うと、ちょっと愉快な気持ちになった。
その話を読んでいて、千春は、声を出して笑ったわけでも、つまらないと本を投げ出したわけでもなかった。ただ、様子を想像していたいと思い、続けて読んでいたいと思った。本は、千春が予想していたようなおもしろさやつまらなさを感じさせるものではない、ということを千春は発見した。
千春は今、言葉通りに空想し、想像の世界を楽しんでいるのではないかと思いました。
…みんなで登山